第44話
そして、俺とルナの二人きりになる。するとルナは俺の手を取り、頭の上に置いた。これは撫でてほしいってことか?いくらでも撫でてやるぞ。撫で心地いいしな。俺はルナの頭を撫でた。するとルナは気持ち良さそうに目を細める。
「お兄様のナデナデは最高ですわ。でも決して好きになったわけじゃありませんのよ。あくまでお兄様成分を補給してるだけですわ」
それっていいものなのか?中毒性があったりするんだろうか。俺もルナ成分を補給できて痛みも引いた気がする。これが妹治癒力か。恐るべき魔法だ。
「お兄様もうあんな無茶はしないでくださいの。格上相手にあんなに激しく戦っていたら命がいくつあっても足りませんわ」
そうは言ってもな。ルナは他の複数の上級の鬼人を相手にしてたし、他はあの鬼人を相手にできるようなやつはいなかったしな。それにルナが相手をできたとしてもルナには怪我をしてほしくないから相手にはさせない。すると自ずと俺が相手をすることになる。
「それでも俺が相手をしなきゃ戦えるやつはいなかっただろう?」
まぁ俺が暴れすぎて大将がでてきた感は否めないが。もしかしたら目立たなければてて来なかったこ可能性もあるが、あくまで可能性だ。最後の仕上げにでてくる可能性もある。
「そうですが、これからは複数にんでやってくださいですの。後学院の生徒達からは嫉妬の眼差しを向けられるかもしれないので気を付けてください。もちろん尊敬の眼差しも多いですが」
まぁ1生徒が英雄だとかいわれれば嫉妬もするか。俺は必死だったから救った実感ないけど。あれはやらなくちゃいけことだから侵攻を防いだだけだし。もし他に適任がいればそいつに任せていただろう。つまり俺はたまたま救ったにすぎない。
「英雄なんて柄じゃないんだがな。嫌がらせがされなきゃいいか」
「お兄様が戦ったのは四天王なんですの」
四天王か、道理で強いわけだ。本気でやったのに歯が立たなかったしな。これで魔王との決戦も控えてるとか大丈夫だよな?たしか原作だとエマが覚醒するんだが。それでも犠牲は多かったはず。なんとか少しでも減らせるように努力するしかないか。
「四天王か、まぁいづれ倒さなきゃいけない相手だな」
「お兄様は戦争が始まったら最前線に行くつもりですの!」
「犠牲者を少なくするにはそれが一番最善だからな」
俺がもっと大規模魔法が使えれば、犠牲者を減らせる。戦力ダウンはなんともしても防がなくてはな。魔王を一回で討てるとも思わないし。ふとルナを見ると険しい表情をしていた。
「それなら私も一緒に戦いますわ」
「いやルナは下がってろ」
「お兄様のために一緒に戦いですの。これだけは引きませんわ」
ルナは決意のこもった目で俺を見た。こうなるとルナは引かないんだよな。大切なもののためにはその命も厭わないほどの覚悟を持っていることをルナと一緒に暮らして分かった。実際に魔王軍との戦争の時も無理矢理敵陣を突破してこっちに来てたし。
「分かったよ。あんまり無茶するなよ。死んだら元もこうもないんだから」
「それはそっちもですわ。もうこんなに傷つかないでくださいの。ボロボロな姿を見て泣きそうになったんですの」
ルナの泣き顔は見たくないからあんまり無茶をしないようにするか。まぁしなきゃいけないときはするが。できるだけ他の人に任せよう。ここは実力のある古式魔法師ならたくさんいるし。優秀な人がたくさんいれば学生の出番はないはずだ。
「お兄様そうすれば今回の功績で陰陽師2級と近衛魔法師特別隊長を叙位されるようですわ」
「それって、忙しくないよね?」
「忙しいとききましたわ。魔物が大量発生してる時と戦争の時はですわ」
働きたくない。傭兵だって滅多に何かある訳じゃないからやってるのにそんなのやったら自分から面倒ごとに突っ込むようなものじゃん。何が好きで渦中の真ん中に行かなきゃ行けないんだよ。
「働きたくない。そんな名誉いらないから。普通の青春を送りたい」
「名誉職なんでもっと誇っていいんではないんですの?隊長なんて軍の幹部ですの」
「俺は自由に動きたいんだよ。部下もったら考えることが多いだろ。それに隊長なんて器じゃない。俺は一人で動くから破壊力が増すんだ」
隊長は全体を見なきゃいけないし、作戦を立てて失敗して死んだら責任を感じてしまう。それだけ覚悟と実力を兼ね備えてなきゃいけない。そんなの普通の学生には荷が重すぎる。
「お兄様は作戦練るの得意そうですの」
「得意だが、多少の犠牲はでるはずだ。そうなると責任を取らなきゃいけない。俺人の命を預かる覚悟がないんだよ」
しかも戦争なんて、謀略しあいだ。隊長になったら相手の幹部ともやりあわないといけない可能性もあるし。正直楽をしたいが、幹部になったらそれはできない。でも断ることはできないよな。おそらく陰陽頭が推薦したんだし。断ったらそれはそれで学院生に嫉妬をさらに向けられる。
「面倒だが受けるか」
全部あの鬼人のイケメンのせいだ。イケメンに関わるとろくなことにならない。
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