第43話

すると鬼胸に傷が入った。あまり深く入らなかったが。一旦距離を置き俺はマッカンを飲んだ。そして魔力を回復する。ふぅーこれで大技はいくつか使える。それにしても結構な雷だと思うんだが、傷を浅くつけることしかできないとは。まぁでもあの水晶は壊したしダメージを与えられる。


「今のは効いたぞ。今度は俺の番だ」 


すると鬼は炎をてにまとい目にも止まらぬ早さで俺との距離を詰めた。くそ早い。そして腹にもろに受けた。そして胸が焼けるような痛みに襲われる。


「がはっ」


その衝撃は車に轢かれたレベルだった。無詠唱で簡単な防御の古式魔法を使ってなければあばら骨全部折っているところだった。だが防御しても一本持ってかれている。どんだけ衝撃が強い攻撃をしてるんだよ。俺はよろよろと立ち上がり、魔力を練った。


「耀剣よ天より降りて木に宿れ急急如律令」


枝がうねうねと鬼人に絡む。


「業火の炎で焼き尽くせ。急急如律令」


炎の渦が鬼人を包むそして、枝を栄養源にどんどん燃え広がる。今のうちに治癒魔法を使って回復しておくか。応急処置で折れたのはくっつかないが。一種の痛み止めみたいなものだ。


上半身裸になった。鬼人がでてくる。今の俺じゃ倒せないのか?かと言って他の有力な陰陽師は遠征に行っている。ここに残っているのは新人だらけだ。どうやって倒せばいい?まだ剣の雷も残っている。俺は深呼吸して落ち着かせた。


俺は魔法でスピードを上げて、鬼人に近づいた。そして、雷を切るところに集中させた。魔力もかなり詰め込んで一気に片をつけることにした。


「トールの雷剣」


雷を落としながら剣を刺しに行く。そして雷剣は鬼人の胸を貫通した。そして電撃を体全体に受けた鬼人は苦渋の表情を浮かべる。これはトール並みの雷だ。これなら効くはず。そしてある程度経つと、剣を抜く。血飛沫が飛ぶ。そして鬼人は胸を押さえながら片ひざを着いた。


「くっ効いたぜ。だが近くによったからにはこっちの攻撃を受けてもらうぜ。魔拳波!」


まるで空気鉄砲のように波動を放ってきた。俺は耐えきれず後方に飛んだ。そして木をなぎ倒していく。これはヤバイ意識が朦朧としてきた。すると鬼人はゆっくりと立ち上がった。


「これで終わりだな。まぁまぁ楽しかったぜ」


そして、ルナが近づこうとしたが他の鬼人が来て止められていた。


「お兄様!」


ここまでか。国を守りたかったな。死んだらまた転生するのだろうか?鬼人が胸を押さえながら近づいてきてるのが分かる。かなりのダメージは与えたはずだ。そろそろ撤退をするだろうから、ルナは守れただろう。


「良くやった。若い陰陽師見習いよ。ここは俺に任せておけ」


「お前は陰陽頭!なぜここに遠征に行っているはずじゃ」


「星読みでこっちがピンチだとでたから抜け出してきたんだよ。あっちあいつらだけでどうにかなるからな。んじゃ俺が相手になるぞ」


「くっこの傷で相手をするには分が悪い。全軍撤退だ」


そう言って鬼人は霊脈をいじり霊獣を生み、後方に撤退していった。陰陽頭がいればもうここは安全だろう。俺は安心してそこで意識が途切れた。


「あれを相手にここまで学生がやるとはな末恐ろしいものだ。さて一仕事するか」


それからルナに聞いた話だと霊獣を魔物のように余裕たっぷりで倒したらしい。



「お兄様!お兄様!」


「んあ、ル、ナか。俺は確か鬼人に倒されて、それで陰陽頭に助けられたんだっけな」


「良かったですの。生きてくれて、大量に血を流していたので、治療符をつけてももしかしたら目覚めないかもしれないとも言われたんですの」


そんなに重症なのか?見渡すと薬品の匂いがする。病院か。それにしても課題が残った戦いだった。無詠唱でもっと強力な魔法が使えれば相手の防御するまもなく攻撃を食らわすことができるだろう。後は魔力量だがこれに関してはマッカンを飲めば回復できるから大丈夫だろう。その隙を生み出せばいい。


「そうか心配かけたなルナ」


「本当ですわ。もし陰陽頭が来てなかったら今頃どうなっていたことやらですわ」


「それで陰陽頭はどこに?お礼を言いたいんだが」


陰陽頭がいなければ俺は死んでいただろう。星読みをやった人には感謝だな。なんとかギリギリ死ぬことを避けられた。ルナを一人ぼっちにはしたくなかったから本当に良かった。


そんなことを考えていると、ドアがノックされた。俺がどうぞというとそこには陰陽頭がいた。俺は緊張をして、上半身だけ身を上げた。下半身は折れてるからな。失礼だが、立つことはできないが。まずはお礼を言って頭を下げた。


「ありがとうございます。陰陽頭が間に合わなかったら俺は今頃死んでました」


「こちらこそ感謝しなくてはならない。良くあの鬼人を相手に踏ん張ったな。学生の身でありながらな。国を守ってくれてありがとう。君はこの国の英雄だ。これからも精進してくれ」


まさか陰陽頭直々に英雄と呼ばれるとは照れ臭いな。だが気持ちは嬉しい。そしてルナも自分のことのように喜んでいる。英雄と呼ばれる人間はそんなに多くない。そして少し現状について話した後、陰陽頭は後は兄妹でゆっくり過ごすがいいと言って病室を出たのだった。












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