第8話
俺達は少し王都を回った後に馬車に戻ってきた。相変わらずルナはいろんな物を買ったが、主に食べ物。洋服はあっちで買うからいい的なことを言っていた。いやうち田舎なんですけどね。店もそんなにいっぱいない。俺はおしゃれにはあまり興味なかったから問題なかったが。
「お兄様の家はお金持ちの家って言ってましたけどどの程度なんですの?」
「地元の有力者って感じだな。一応地元のトップではある。だが地元運営にしか関わってないらしいぞ。政治は面倒らしいし」
「それなら学校はどうにかなりますわね。お金の方も問題ないですわね」
それでもバイトはさせるがな。貴族の金銭感覚はおかしいからな。通常の金銭感覚と働く大変さを知ってもらわなくては。俺も同じ場所で働くつもりだ。まぁ夏休みの間だけだが。親父のコネでバイトは決まるだろう。
「問題ないんだが、ルナにはバイトをしてもらうぞ。庶民の生活に慣れてもらいたいからな。それと俺は王都に住んでるからそんなに会えないが」
本当はいつでも会いたいが、それは仕方ない。だって学校は違うんだから。王立までのコネはないだろうし。地元じゃそれなり楽しく暮らせるからいいと思うが。贅沢しなければお金はあんまり地元じゃかからないからな。
「バイトですの?私これでも元貴族ですわよ。できると思えないんですの。それに裕福ならバイトはしなくても良いんじゃないですの?」
「今のままだとお金を湯いのように使って、すぐに金欠になりそうだからな。それでまたお金をもらってそれを繰り返したら信頼がなくなるだろう。それなら働くことの大変さを知って、お金をあまり使わない方がいいと思ってな」
貴族は裕福すぎるから金銭感覚がおかしい。特にトラストの貴族はな。悪役令嬢となると余計にだろう。むしろ裕福なのをひとつのステータスにして仲間を作っている。お金と権力で人が集まっているってことだ。それに庶民とずれすぎた金銭感覚だと友達ができてもすぐに離れる場合がある。
「確かに貴族と庶民じゃ生活が違いますわね。分かりましたの。バイトをしますわ」
「バイトは紹介だからそんなにきつくないのにするか」
始めてできついバイトは心が折れる可能性があるからな。最初は魔法講師とかいいかもな。適正もあるだろうし。うちの国の底上げにも繋がる。優秀な魔法師は一人でもいた方がいい。
「分かりましたわ。それじゃいざリュールに行きますの」
そして馬車を出発をさせる。馬にもニンジンをあげて少し休ませたから元気になっているな。スピードが出発と同じくらいだ。ルナは風景を楽しんでいる。トラストにはない田園風景が広がっているからな。新鮮なんだろう。
「田舎っていうのもいいですわね」
「そう言ってもらえてアラスタ国の出身としては嬉しい限りだ」
王都を除き、アラスタはほとんどが田園だ。これが農業大国といわれる由縁で、田舎臭いともいわれる理由だろう。俺としては東京よりも千葉の田舎の方が落ち着いたからこの国の方がトラストよりも好きだ。
それからしばらく馬車で進んでいく。そしてだんだん畑から森に増えてきた。そろそろか。リュールは農業も盛んだが、木を輸出したりして、林業も盛んだ。それに森にはエルフもいるから、制限はある。だから森は切りすぎないでちょうどいい感じに残っている。
「森なんて久しぶり見ましたわ」
まぁトラストは木は輸入してるからな。うちの国とかから。トラストは木造が多い。その方が魔法も浸透しやすいからだろそうだ。自然にあるもの方が魔法が効きやすいってことだろう。
「そうか、この辺じゃ森か多いからすぐ慣れると思うぞ。それにする空けてる場所なら魔法のトレーニングにもなるからな」
これが森が多いリュールの利点である。幼少期から意味で魔法のトレーニングに使っていた。まぁさすがに上級魔法は使用してないが。森が消し炭になるからな。その辺はルナにも教えておくか。
「ルナ上級魔法は使用するなよ。エルフが怒って戦闘しかけかねない」
エルフの魔法力は人間を上回っている。戦闘になったら魔法師は少ないのに戦闘をしたらボロボロになるのは目に見えている。それはるなとエマがいたとしてもだ。トラストが全力でやっと勝てるくらいだろう。
「分かりましたの。でもどこで上級魔法の練習すればいいんですの?」
「うちの家の魔法専用のドームがあるからそこでやってくれ」
わざわざニホンの技術で作った練習場だからな。そう簡単に崩れない。なぜか魔法師は少ないのにニホンの技術で魔法師専用のドームができたのかは謎だが。トラストとも関係があるのだろうか。
「すごいですわね。魔法を放てるところが家の敷地内にあるなんて。しかもドームってニホンの最新技術じゃないんですの?」
「うちの家はニホンとは懇意の関係だからな。少し安くしてもらったんだよ」
それでも莫大な金額がかかる。魔法の練習のためにそこまでお金をかけるんだから親バカなんだろう。そんなことを話していると、家に着いた。
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