第17話:復活への道

「美味しかった。ハンバーグという肉の塊に乗せてあったパイナップルという果物とベーコンがすごく良い味出してた。私は、この料理好きです。」


先程までの暗い雰囲気は消えて、良い笑顔を見せるミレイを見て、瑠夏は頑張って作って良かったなと思いながらテーブルの上を片付け、代わりに食後のホットミルクティーをセットした。


「美味しいです!」


そう言って、ミレイはミルクティーを手にしたまま外の夜景を眺めた。


「ホントに、この世界の人族はスゴイですね。魔法も魔道具も使わずにこんな世界を創り上げてしまうなんて。私達には想像もつきません。真昼のように明るい室内もそうですし、時々見かけるドラゴンのように空を飛んでいる飛行機というものや、道路をフォレストウルフ並みの速さで走る巨大な自動車、橋の下を時折り潜り抜けるリヴァイアサン並みの巨体を持つ貨物船、上げればキリがありません。この世界を見ていると、魔法は本当に必要なのかと思ってしまいます。」


感慨深げに話すミレイを見て、瑠夏は自分の思うままに答えた。


「でもね。この世界で暮らす人達も、その多くが魔法に憧れを抱くんだよ。というか、魔法に憧れを持っていない人を探す方が大変だと思うな。突然目の前に生み出される炎の塊や水の塊、どんな病気や怪我にも対応できる回復魔法。ありえないほどの荷物を収納できる時間停止機能付きの収納魔法。更にもっと言えば、天災と言われる程の巨大な竜巻(サイクロン)、一瞬にして街を滅ぼすほどの巨大な隕石群(メテオ)、一瞬にして周辺を凍りつかせる氷結地獄(コキュートス)、やはり憧れてしまうよ。」


その瑠夏の言葉にミレイが慌てた。


「ちょっ、ちょっと待って下さい!この世界って、魔法が無いんですよね。どうしてそんなにたくさんの、それもほとんど知る人の少ない神級魔法や私も知らない魔法の名前がたくさん出てくるんですか?」


今度は、ミレイの言葉に瑠夏が慌てた。


「ちょっと待って、落ち着いて!僕達の世界には魔法が無いから、やはり憧れるんだよ。そして、小説やアニメなんかの物語やゲームの中で、こんな魔法があったら良いなと思って再現するんだよ。」


そう言って、瑠夏はパッドを操作すると、ネットに溢れんばかりにアップされているそれらで使用されている魔法の動画や画像を検索しまくり、ミレイに見せた。


次から次へと流れてくる映像に、彼女は圧倒されていた。


炎魔法、氷魔法、水魔法などの属性魔法を始めとして、回復魔法、付与魔法などもかなりの精度で再現されていた。


しかも、登場してくる種族が、人族だけではなく、エルフやドワーフ、獣人族やハーフリング、妖精や神獣などなど、見慣れた種族が数多く登場し、次々と神級魔法と呼ばれる魔法を連発していた。


「こ、この世界には魔法は無いのですよね。それなのにどうして魔法がこんなにも忠実に再現されているのですか?」


「う〜ん、ミレイちゃんの世界の魔法は、どうやって覚えるの?」


「えっ?王級までの魔法は親や師匠が教えてくれるけど、神級やそれ以上の魔法は、精霊やダンジョンの宝箱から稀に見つかるスクロールから覚えます。」


どうしてこんなことを聞かれるのか判らないミレイはすぐに返答した。


「自分で新しい魔法を作り上げることはないの?」


「魔道具なら、全く新しいものが出てくることはあるけど、私が知ってる限りはないかな。」


「だったら、人や精霊の想像力には限りがあるから似たような魔法が出来上がっても仕方ないように思えるよ。」


瑠夏はパッドを操作して、あまりメジャーでない魔法を検索し、その画像一覧を並べた。


「例えば、これは火炎放射(ファイアバースト)、火魔法に風魔法によるブーストをかけたもので、多くの酸素、酸素というのは物が燃えるために必要な元素ね。が混じることでその威力は倍増に留まらない。これは水球(ウォーターボール)に雷魔法を付与したもので、電気が水を伝わりやすいということで、その破壊力は計り知れなくなる・・」


順番にアップされた画像を説明を聞くミレイの目はキラキラと輝いていた。


「僕達の世界では、ベースに科学があり、自然現象を科学から考えることは、ごく普通に行われる。だから、魔法に対しても科学を応用して、その威力を高めようとするんじゃないかな。」


不意にキラキラと輝いていたミレイの目に影が差し、その全身から力が抜けた。

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