第13話:仲間2

一頻り泣いて少し落ち着いた瑠夏が、一息つくために持ってきた、氷入りのグラスに入った百パーセントみかんジュースを飲みながら、今度は瑠夏が幼女に訊ねた。


「さっきも聞いたけど、良かったら名前を教えてくれるかな。」


その言葉に幼女は素直に頷いて応えた。


「私の名前は、ミレイと言います。元々はミレイ・アリスレア・フルメンクという名前でしたが、精霊神の神子として認められてからは、冠位も姓も返上しました。これでも自由都市フルメンクを護る神殿の長を勤めております。まぁ、神殿と言っても、私の他には巫女見習いが二人しかいない小さな神殿ですけどね。」


それだけ一気に説明すると、ミレイはグラスのみかんジュースに口をつけて、目を見開いた。


「お、美味しい!こ、これは何ていう飲み物ですか?」


「温州みかんという果物から作られたジュースで、P○Mジュースって言うんだけど、似たような果物はミレイちゃんの世界にもあるんじゃないかな?ほら、こんな果物だよ。」


瑠夏はスマホを操作して、温州みかんの画像を検索すると、それをミレイに見せた。


「似たような果物はありますが、酸っぱくて誰も食べません。こんなに甘いなんて信じられしません。それと、その絵の浮かび上がったボードは何なんですか?聖遺物か何かですか?」


瑠夏の手にしたスマホを見て、ミレイは驚愕の表情を浮かべていた。


「これはスマホと言ってね、僕達の世界では子供や老人関わらず、似たようなものは誰でも持ってるよ。そうだ、この部屋で使うだけなら、パッドも使えるから使ってみるかい?」


そう言って、瑠夏は動画編集用にプロを購入した為に使わなくなったエアをミレイに手渡した。


「まずはこのボタンを押してくれるかな。」


ミレイがボタンに触れると、電源が作用して画面に数字ボードが現れた。


「4649と押してみて。」


シンクロで、その程度の知識は理解している彼女が、順にボタンを押していくと、パッドが起動した。


「次に、Gと書いてあるアイコンを押して画面が変わったら、右側にあるマイクのボタンを押して、調べたいことを話しかけて検索が終了したら、もう一度マイクのボタンを押してみて。」


言われたままにミレイが操作して検索画面が現れ、マイクのアイコンに触れた。


「みかん」


すると、各種の検索結果がズラーッと並んだので、瑠夏は上部にある画像のボタンをクリックするように教えると、画面におかしなキャラも含む画像がズラーッと並んだ。


「うわぁ、みかんがいっぱい出てきた!・・・で、これはみかんの妖精さんですか?」


画像に映し出されたみかんを模したキャラクターをミレイが指差したので、瑠夏は、それはみかんを売り出すための宣伝用マスコットだということを教えた。


それからしばらくの間、検索を覚えたミレイは、片時もパッドを話すことなく、一日中、検索しまくり、おかげで安静は守られ身体の回復は順調に進んだ。シンクロで手に入れた知識は、この期間でかなり自分のものとできたようだった。


特に興味を引くのは食べ物らしく、瑠夏が提供する食事やデザートで気に入ったものがあれば即座に検索をかけ、僅か一週間ほどで甘味の知識は瑠夏を越えた。


ーーー

「はぁぃ!今日の朝ごはんは、ハムエッグとジャム・バタートースト、果実入りヨーグルトとホットミルクだよ。」


この頃には、ミレイは椅子に座って食事を取ることができるようになり、まだ自由に歩き回ることはできなかったが、どうにか点滴も抜くことができ、室内の移動はアメゾンで購入した簡易の車椅子を使い、トイレはトイレットペーパーホルダーに手をかけてではあったが、自力ですることができていた。


初めてトイレを使用した時には、お約束の感激タイムがあったことは言うまでもない。


「もうそろそろ、杖を使えば移動は可能だと思うのだけど、どうでしょうか?」


ミレイが瑠夏にそのように提案した三日後には、車椅子は必要なくなり、室内は杖で移動するようになり、介護用の補助椅子を使ってではあるが、自力での入浴も可能になっていた。


ここでもまた、シャンプーやリンス、トリートメント、ボディソープなどの用品や、シャワーなどの設備に対する感激タイムが成立していた。

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