2−2 瞑想:メタ認知強化法

 このエッセイが強調している「メタ認知」の強化方法についてお伝えします。「メタ認知」を鍛えるとどうなるのでしょうか? それにはまず意思決定のプロセスについて知る必要があります。意思決定は「知覚・認知・行動」の順で決定されます。「知覚」は五感を使って外部から得た情報です。「認知」は「知覚」で得た情報を脳が認識して処理する。「行動」そして反応を示す訳です。



「知覚A・認知A・行動A」


 とそのまま行動Aを取るところを


『知覚B(「知覚A・認知A」)・認知B・行動B』


 行動Bへと行動を変えることができます。


 何らかのトリガーで(知覚A)があったとします。知覚を処理して「死にたい回路」が作動します(認知A)ですね。「死にたい」と叫ぶところ(行動A)を「疲れた」という呟きに(行動B)できます。「大事だった人の名前」を叫ぶところ(行動A)を「頭文字」だけ叫ぶことに(行動B)できます。

 死にたいと脳内で連呼している状態(認知A)で同僚とたわいのない話で談笑(行動B)できたりもします。


 「メタ認知」は、知覚・認知・行動の「認知~行動」の一瞬の狭間を遅らせる行為です。では、「知覚~認知」を遅らせるのはどうなのでしょう。


 本を読む。読むけど文字が書いてあるのは分かるけど(知覚A)、なんて書いているか分からない(遅れた認知A)、泣きながら先の文字を読む(行動A・知覚B)その文字もなんて書いているのか分からない(遅れた認知B)。


 もう一例あげましょう。


 主治医が話す(知覚A)。なんて答えようか頭がまとまらない、分からない(遅れた認知A)。答える前に主治医が次の話を話す(知覚B)、先の話の答えを話そうとするが話が終わっているので口を閉ざす(中断された行動A)、次の話もなんて答えようか頭がまとまらない、分からない(遅れた認知B)。「お大事に」(知覚C)


 さて、気持ち悪くなってきたところで頭をぶん殴られるような文章を引用しましょう。『なぜ人は破壊的な感情を持つのか』です。


 ”問題は、感情が暴発しないように、発端の部分で変化させられるのかということだ。感情のまま行動したいという衝動と実際の反応の間に、もう少し時間的余裕が持てれば、もっと慎重に反応することができるはずだ。「四〇年以上前、わたしが精神分析医だった頃」ポールは言った。「わたしの先生が言いました。」『きみが目標とすべきなのは、患者が衝動から行動に移るまでの時間を増やすことだ。それができれば、患者が快方に向かっているということだ』猊下がおっしゃっているのは、衝動が起きる前の評価の時間を増やすということです。衝動から行動までではなく、評価から衝動までです。これは驚くべき違いであり、大変重要な問題です」”


『なぜ人は破壊的な感情を持つのか』ダライ・ラマ ダニエルゴールマン著 加藤洋子訳,2003,p.136,l.17,株式会社アーティストハウスパブリッシャーズより引用


 さて、難しい話なので私はわかりませんが、さっきあげた「知覚~認知」を遅らせる話と「認知~行動」を遅らせる話とかぶって見えませんか?


 ポールとかいう精神分析医は、衝動から行動までの時間を増やせば快方に向かっている、そう教わってきた。とあります。一つ疑問があります。精神科医もそうなのでしょうか? 知覚~認知を遅らせて問題行動がなくなった。健常者から見て無力化・無害化できた。快方に向かっている。


 類推です。論理の飛躍があります。私は詳しくありません。でも、そういったコンセプトの薬がないと言い切れますか??


 このエッセイは双極性障害を無害化して、健常者様の為になるエッセイではありません。知覚~認知を遅らせることの先に幸せがあるとは思えないのです。幸せにつながるとしたら認知~行動を一瞬遅らせること、並行処理すること、「メタ認知」の強化です。


 「メタ認知」の強化で有効なのは「瞑想」です。あぐらをかいて尾てい骨を立たせ、尾てい骨を安定させるように尻の下にクッションをしきます。手のひらを膝の上にリラックスして広げたら目をつむり、何も考えない状態を作ります。最初も何も難しいので、最初は数を数えて、数を数える以外は何も考えない状態を作り、やがて数も数えないようにします。むずいです。


 なぜ有効なのでしょうか。瞑想はなるべく「知覚」の情報を遮断します。部屋を暗くしたり、静かな環境で行うということですね。認知~行動だけのループが続く状態にします。(数を数える以外は何も考えない状態です)「6」という数を思い浮かべる(認知A)「7」という数を思い浮かべるよう指令を出す(行動A)「7」という数を思い浮かべる(認知B)という循環です。その循環を断ち切ります。(数も数えないようにします)

認知~行動の合間を作りだし、なくす訓練です。認知~行動の数えるという行いを認知だけがぽっかり浮いている状態にする。それが「メタ認知」の強化となる理由です。


 ここでさらに瞑想がいかにメタ認知にいかにいいかと詳しく言っている書籍を紹介したいところですが、直接的にはないです。強いて言うなら『なぜ人は破壊的な感情を持つのか』が瞑想の有効性を繰り返し主張していて、信頼できる書籍です。第8回「心と生命会議」を記録したものですものね。瞑想の有効性は東洋医学の本が詳しいです。ここがくせ者で、うさんくさい書籍に溢れています。宗教っぽかったり自己啓発っぽかったり、瞑想の仕方も人それぞれで本当に模索してくださいとしか言えない状態です。それでも。効くかどうかはやればわかります。自分に必要ならわかります。そして時間をちょっと割くリスクだけで何もそれ以外のリスクはありません。



 私たちはひっそりと努力しましょう。幸せになるために。その為のメタ認知強化法です。瞑想。難しいけれど色々試して自分なりのやり方で訓練してみて下さい。


 幸せになりましょう。

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