第67話 麒麟汚職事件の犯人**⁂*⋆*


 

 


 ケンは小森の一味に腕を見込まれ、この一連の麒麟汚職事件に大きく関わっていた。実は、麒麟の孫会社麒麟レジャーの社長青木ことイヨンス殺害もケンが実行していた。余りにも巨大な汚職事件を、知り過ぎたケンは殺害された。


 

 そして…生後間もない醤油メ―カ―イチイの豊子お嬢様誘拐事件も、類い稀な身体能力を有するサンカの仕業だった。


 小森は尋常ではない俊敏性に長けたサンカを山奥で見つけ、以前から目をつけていた(これは使える!)と直感が働き、訓練を受けさせ強行に及んだ。

 また、無国籍だから足がつかない大きな利点がある事に、以前から目をつけていた。 

 戸籍上存在しない人間だから……。

 必要なくなったサンカは、例え殺害されても、サンカの存在を把握されていないので捜索される事もない。


 

 それではさとみクリニックの看護師長ゆかりは、どこに消えたのか?


 一つには、清輝の母でキヨシと親子以上の関係だった光子の息子矢島の可能性が出て来た。矢島は以前から光子の息子ではと、言われている芸能事務所の社長で、田淵組長の義弟矢島の長男である。そして…息子矢島と田淵は旧知の仲で、キヨシは田淵組長の息子同然だった。


 キヨシがゆかりにしつこく付きまとわれ光子に相談した結果、光子が息子矢島に相談、それを田淵組長に相談した。

 田淵組長も可愛い息子キヨシの為を思い殺害させたのでは?プロに死体処理を頼めば、何の証拠も残さず後処理が出来るらしい。


 それでも…頼まれたからと言ってもそんなバカな事はしないと思うが、キヨシの養父田淵組長がついているので、充分有り得る話しだが……。


 今となっては、全て藪の中。



 🔶🔷🔶

 泡の如く消えたサンカは、民主主義「ものごとをみんなで決めていく」を掲げる、近代発展を遂げた日本国において、奴隷や迫害の憂き目にあい、虐げられ、はみ出し、行き場を失い、弱い仲間同士怒濤を組み、サンカだけの世界を生きた野生人。


 はた目には「原始人か!」と指を差されそうだが、酷い仕打ちに耐え一般社会で生きて行く事を考えれば、案外幸せとは言わないが、世間体、地位名誉、他人との比較、優劣、そんなものに拘らない。有りのままに、欲望のままに生きた人生は、本来人間がもっとも欲する生き方なのかも知れない。


 野生的で、動物的で、食べたいものを河原で捕まえたり、野山の果物や山菜を積んだり、食べたいように食べ、昼夜構わず快楽に乱れ、溺れ、乱交に進み、欲望の限りを尽くす。こんな生き方も、まんざら捨てたものではないのかも知れない。


 こんな日常に、慣れ当たり前に思うが、一歩一般社会に足を踏み入れれば、無国籍、話せない、字が書けない、只々軽視、軽蔑、蔑みの目に晒される。


 誰もがそんな事を思っている訳ないのだが、自分の身の上を痛いほど分かっているので、コンプレックスで勝手に悪く考えてしまう。


 だから、コンプレックスの塊のサンカの母ヨシ子は、一度手にした途方もつかない地位の味を知って、その魅力に取り憑かれ、溺れ、人一倍感じ取り、この現状をどんな事をしても手放したくない。


 人の何十倍も何百倍もそう思うのだ。


 母ヨシ子は権力の虜となり、権力に魅了され、子供たちを誰もが羨む世界に送り込んだ。

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