第63話 洋子とケン ⁂*⋆*



 一九九五年洋子四十歳。

 洋子は等々子宝を授かれず仕舞い。その為、またしても最近弁護士として働きだした。


 洋子が『こうふく園』で仲の良かった、あの可愛いケンは今どこに?

 

 一九八十一年年春先の事…勇代議士を殺害してタンと褒美を貰えると有頂天になっていたケンだが?あっけなく無残に殺害されてしまった。


 ケンは今まで現金強奪、ヤクザ抗争で敵の親分殺害など数々の手柄を立ててきたヒットマン。実は…ケンは子供の頃、ある乞食にさらわれてしまった。


 それは…ある日の事だ。いつも通り掛かる養護施設『こうふく園』のこのケンという坊やのすばしこさに目が行った。(この逸材を教育しよう)そう思い拐った。


 こうしてヒットマンとしてあらゆる殺人教育を受けてきたケン。戸籍も無い指紋認証も出来ないケンはヒットマンとして最高の逸材だった。上手く遂行してくれさえすれば、証拠は全く残らないのだから。一流の殺し屋の報酬は法外な金額と聞いた事がある。


 一件につき現在の金に換算すると、数千万円という話もある。


 

 ケンが目をつけられた理由は、実は…それもこれも山奥で鍛えられた俊敏性が有っての事。いつ何時、熊や猪に襲われるかもしれない。サンカとして自然と備わった俊敏生に加え、ヒットマンとして鍛えられた、誰にも叶わない腕がある。


 そんな、殺し屋ヒットマンのケンは、普段は一般社会に溶け込み、ある時は乞食として身を隠し、ある時はサラリーマンと偽り、またある時は店員と偽り、また身元のグレーな(詳しい身元を追及されない)ホストとして働き、生きている。


 🔶🔷🔶

 サンカは極一部の村人とは交流を持っていたが、サンカ部落に足を踏み入れ悪巧みを企む輩を山ほど見てきた。だから…怪しい輩が近ずくや否や、素早く林に身を隠して生きて来た。

 

 そんな事から、俊敏性が備わっている。いつ何時、悪人が襲って来るかも知れない。熊や猪に襲われるかもしれない。


 その為、風のごとく山々を駆けずり回るサンカ達の動きは本当に俊敏だ。山奥で生きて行くには、動きが素早く筋肉も鍛えられている。


 山から山への移動時に重い物も持つので、常人とは比べ物にならない運動能力。


 まさに忍者そのもの。言い伝えによると忍者の末裔では?ともいわれている。



 🔷🔶🔷

 洋子が捜している人物、それは……?


 実はサンカとして集団で生活をしていた時に、二歳下のケンをよく世話をしていた。


 だが、父親に売り飛ばされた洋子は七歳の時に母と連れ立って、このあいりん地区にある柳川会にやって来た。


 その時に柳川会の若頭小森に引き取られていた五歳になったばかりのケンと遭遇していた。

 


そして…この柳川会が裏で操るキリスト教会のキリスト系養護施設『こうふく園』で暫く生活する事となった。


 どうも…理事長が元ヤクザらしいのだが、ひた隠しにしている。この施設は園の子供たちの養子縁組を推奨する施設だった。


 まさか?キリスト教系の養護施設の牧師が元ヤクザで理事長などとは露とも思わず、洋子は、このような経路を辿って山下家のお嬢様となった。


 洋子は山下家に養子縁組され『こうふく園』を去る時に、子供ながらに可愛がっていたケンと又どうしても会いたくて、クシャクシャの紙に電話番号を書いて渡しておいた。


 その後も付き合いは続き兄弟のような付き合いをしていた。


 それが突然連絡が途絶えてしまって必死になって捜している。


 一般社会に溶け込み正体を隠して、人殺しをしても戸籍を持たないサンカは、幽霊のような一切の証拠の残らない存在。サンカを利用して、人殺しとして利用するだけ利用して闇に葬られてしまったのだろうか?

 

 洋子は可愛がっていた憎めない可愛いケンを、必死に追っている。


 それにしても…全盛期には大勢のサンカが存在していたのに……。


 弱い立場のサンカは一体どこに消えてしまったのか?


 普通に社会に溶け込み幸せを手にした人もいる事だろう?


 勿論色んなコネクションを使って上り詰めた人もいるだろう?


 それにしても何故、あんな山奥の同じ場所に遺体を何体も遺棄したのだろうか?ひょっとしたらサンカの収穫場所だったのかもしれない。


 サンカには、秘密の暗号のようなものが存在していたらしい。危険を知らせたり重要な話や美味しい話がある時は、秘密の暗号で連絡を取っていたらしい?


 今でも現実社会になじめず森に潜んでいる仲間を何とか助けようと?腹の足しにでもと思い?ケンが己の末路を感じ取り、仲間を必死に助けようと死体を置き去りにしたのでは?


 だけど…相手は高齢者勇代議士人肉にするには…チョット?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る