第29話 由美子と隆史 *
一九八三年初秋の事。由美子は隆史と喫茶店で何やら神妙な面持ちで話し合っている。
隆史の発した【犯罪】と言う言葉に、いつもの可愛い由美子の顔とは打って変わって見る見る鬼の形相になり、隆史もどうしたら良いものか困り果てている。
「私は何も知らないけれど、過去に殺害されそうになった親戚が居たとは聞いているわ。それから私の周りに謎の女性がうろついて…まだな~んにも…分からないから?」
「そうだったのか~!そうだよな~自分の知らないところで何が起こっているかなんて?」
「それで幸ちゃんがどうしたの?」
「京都ドライブの日俺は、実は…あの~その~実は?」
「何なのよ~ハッキリ言いなさいよ~!」
「あの~その~」
「ああああああ…うっとうしい。なんなのよ~」
「アア嗚呼ああ…💦俺は、実は…由美ちゃんの電話番号を聞いて、お付き合いさせて欲しいと思っていたんだ。すると幸ちゃんが由美ちゃんは風邪引いて来れないって事で…」
実は京都ドライブの日幸子と隆史は、京都の観光巡りの後の車中で間違いを犯していた。それは夜の静まり返ったドライブインでの事。
喉が乾いた二人は、車中で飲み物を飲んでいだ。すると、幸子が真剣な面持ちで話し出した。
「私気付いていたのよ。隆史さんが由美子の事好きだって事。どうなの。やっぱり由美ちゃんの事が好き?」
「……」
「言ってよ。ハッキリ!」
「……」
「由美ちゃんは、良い子だけど…ちょっと怪しい娘よ。隆史止めた方が良いと思うよ」
「何が怪しいんだい?」
「分からないけれど…ケバイ女が付きまとっているのよ」
「……」
すると幸子が、今度は自分の気持ちが抑えられなくなって隆史に抱き着き「嫌々!由美子に渡したくない。私の隆史さんでいて。お願い!」
パーキングだというのに、幸子が隆史の唇に💋幸子の唇を押し当て来た。
「ヤッ止めろよ!」
「私隆史の事が好き。だから…だから…どうなっても良いの」
尚も唇を押し当てながら今度は、抱きついて来た。
「私隆史を最初に見た時からずっと、隆史しか目に入らなかった。私じゃダメ?」
「……」
隆史は最初に由美子を見た時から、可憐で美しい由美子に心奪われていた。
だから…由美子と遠乗りして京都ドライブが出来ると思い、胸踊らせやって来たのに、意に反してタイプではない幸子と京都ドライブになって少しイラついている。
すると幸子が今度は、可愛い下着を外して美しい身体を晒して言った。
「私傷付いても良い。隆史の事が好き!だから良いの!」
いくら大して好きではない女性でも、美しい若い身体を目の前に、血気盛んな隆史は我慢できなくなり、夜の薄明かりのパ―キングで関係をもってしまった。
それからは、幸子から頻繁に電話が入った?
幸子の主導で話しは進んで行くが、あの時は若気の至りで興奮してしまい好きでもない幸子と肉体関係を結んでしまったが、本当のところ一目惚れした由美子に会えなくなり、好きでもない幸子に付きまとわれ、理不尽な状態に耐えられない気持ちで一杯だ。
日に日にその不満は膨れ上がり、とうとう決意した。
幸子と関係を持ったにも拘わらず、居留守を使うようになって行った。
酷い事を!と思うだろうが?嫌なものは嫌なのだ。
幸子は大切な愛する人にだけ捧げる大切なものを、隆史にだから捧げたのに、電話をかけても居留守ばかり。知多市の自宅に赴いても居留守ばかり。
「初めての命をかけた恋だったのに!どうして…どうして…あんなに大切なものまで隆史に捧げたのに…何故?」
苦しくて…苦しくて…会いたくて…会いたくて…またしても知多市の隆史の家に向かう。そして待ち構えているが、愛しい隆史は会ってはくれぬ。
それでも…会えないと分かっていても夢遊病者のように、隆史の出没しそうな場所を徘徊する幸子。
こんな事が続き、とうとう余りのショックで発狂してしまった。そして…しばらく精神病院に入院していた。
そんな理由から、由美子は、幸子と隆史に三年も会えなかったのだ。
そして…この恋愛模様には想像もつかない悲劇が……。
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