第28話 ゆかりの脅迫 ⁂⋆
あの日以来キヨシは、若く美しいゆかりの虜になり、妻に隠れて逢瀬の毎日——
ゆかりも、この絵に描いたように美しいキヨシを絶対自分だけのものに!と目論んでいる。
「アア嗚呼ああ……キヨシが私にするような事を、毎日里美先生としていると思うと気が狂いそうなのゥゥウ。゚(゚´Д`゚)゚。ワァ~ワァ~~ンお願い先生と別れて~!」
「いやいや…今は誠もいるから出来ない。そのうち…」
「本当にその内、考えてくれるのね?あなたの為なら私看護師として一生懸命働くからお願い!」
キヨシは知的な里美を、院長としてまた医師として努力を惜しまない真摯な姿勢の里美を崇拝している。それなので離婚などあり得ないと思っている。
一方では若い魅力的なゆかりを、手放すことも出来ず二十年近く関係が続いている。
現在ゆかりは煮え切らないキヨシに業を煮やして、仕方なく病院の患者さんだった消防士の北川と結婚している。
親が口うるさかったせいもあり、仕方なく結婚しただけの相手、愛情など有る筈もなく、十歳になる娘がいるのだが、子供も手が掛からなくなり女ざかりのゆかりは頻繁にキヨシの携帯に電話を掛けている。
(里美にバレたら!)とキヨシはハラハラ、もうゆかりにうんざり潮時だと思っている。
以前から料理作りが趣味で家で料理の勉強。それでも飽き足らず料理教室に通い調理師免許も取得………現在キヨシは趣味が高じて、大阪市内に喫茶店を三店舗経営している。
喫茶店も軌道に乗り順風満帆のキヨシなのだが、里美とゆかりに挟まれ四苦八苦の毎日。
「キヨシ⋆💋・♡・。* ⋆今日いいでしょう💋*⋆*」
「俺、喫茶店の仕事でヘトヘト…今日ちょっと…へっへへへ疲れちゃって~ごめんね~。寝かせてくれる?」
(最近ご無沙汰だし…最近は携帯電話がひっきりなしに鳴りっぱなし。夜遅く帰ってくる事も頻繁に。怪しい?女でも…)
そして興信所に依頼を……。
するとゆかりとの決定的な姿が目撃されていた。二人で身体をすり寄せホテルに消える決定的な写真が……。
その夜「あなたこの写真は何なの?それも看護師長のゆかりと二十年近くも続いていたなんて!許せない!許せない!もう出て行って!終わりよゥゥウ。゚(゚´Д`゚)゚。~ワァ~~ワァ~~ン」
「許してくれ!俺は…俺は…そんな~?切りたくても切れなくて…困っているんだ!」
次の日午前の診察が終わって誰もいなくなった診察室で……。
「ゆかりさん、私があなたを呼び出したのは他でもない。分るでしょう?今月いっぱいで辞めてください。顔も見たくありません。この泥棒猫が!それからキヨシの事も許せなくて~!私というものが有りながら女が居たなんて、あんな不潔な男こっちから願い下げ!」
キヨシは妻からの三行半に、茫然自失になって失いかけたものがいかに大きかったか、思い知らされている。
「里美許してくれ!お願い…お願いだ!お前と誠と離れ離れになるなんて絶対できない!」
「二十年近くも?嗚呼…バカな私!仕事にかまけて気付かなかったなんて…情けない。二十年も私を裏切り続けていたなんて絶対許せません。誠もいる事だし別居して…それから…」
キヨシは賃貸マンションに移り住み懺悔の日々。
そこにゆかりからの電話「嗚呼…今更別れられない!会いたいの~💋⋈◍。✧♡」
「でも…もう別れよう!」
「もう一度…もう一度だけ!お願い!」
「何を言ってるんだ!絶対ダメだ!ダメだ!ダメだ!!」
「お願い!お願い!」
「もう絶対電話して来ないで!」
「そのうちに?そのうちに?と期待を持たせておきながら二十年近くも私の身体を好き放題にゥゥウ。゚(゚´Д`゚)゚。ワァワァ~~ン」
「お前がどうしても会いたい……どうしても!と言うからじゃないか、こっちだって?」
「お願い!お願~い!」
「しつこい、俺はもうこんな事嫌だ!」
「キヨシそんなこと言って良いの~闇サイト知ってる~?【ダークウエ―ブと呼ばれる特別なネットのみで公開されている。一定のスキルを要する、それゆえに流通する情報はさらに凶悪化しやすく、一般の生活では考えられないような行為が横行している。】昔のヤバイ友達が阿倍野区に住んでいて、近くの西成区のツレに闇サイト教えて貰って教えてくれたの!最近子供の塾が一緒でお茶したりする仲なのよ~、その友達と私もハマっちゃったのよね~!そこに大女優山本光子の息子は、すでに殺害されていて?影武者が居るとの事?写真まで公開されているのよ、どう見ても…キヨシにそっくりだったけど…第一さとみクリニックの理事長に治まっているけど私知っているのよ。あなたが元ホストだって事。まぁホストだったら…そういう世界と通じていてもおかしくないわね。それを里美先生にバラしてもいいの?バラされたくなかったら私と別れるなんて事言わないで~お願い!」
「バッバカな…そんな事なんか有るもんか?似ている人なんかこの世の中にウヨウヨいるから…」
「誰にも言わないから~、だから別れるなんて言わないでお願い!お願い!愛しているのよワァワァ~~ン」
キヨシはゆかりが益々わずらわしくいっその事、死んでくれたら……。
冷や汗がタラタラ💦確かにホスト時代には人に言えない悪事の限りを尽くしていた。だが、妻には絶対知られたくない。たとえそれが噂であってもプライドの高い里美の事、即離婚になることはキヨシが一番分かっている。
(あのゆかりさえ居なくなれば——!)そんな恐ろしい事を考える男になってしまったキヨシ。
二〇〇六年秋の事である。
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