第22話 母ヨシ子は今 *⁂*⁂




 一九八〇年宏との間に授かったヨシ子の息子大輔は、今十五歳の高校一年生。


 本妻さんには娘さんが二人、その為宏は地盤を引き継ぐのは大輔しかいないと算段している。


 宏は現在六十五歳、ヨシ子四十八歳、一方の本妻辰子六十三歳、今日も愛人宅に押しかけ嫌味タラタラ。


「あなたみたいな下品な出自のお方をよくも宏も面倒を見ているものよね~?あなた石川県出身の木村百合って本当なの~?秘書に調べさせたのよ。するとあやふやだって言うじゃない…宏をたぶらかして妾の分際で大輔に地盤を引き継がせようなど、もっての外!淫乱女出て行きなさいよ~!」


「奥様、私はそのような事はみじんも思っていません。ただ大輔の為にも宏さんとは別れることはできません。お許しください!」


「この泥棒猫が――ッ!」                      


 そこに宏が帰宅した。

「辰子なんだよ~?すごい剣幕で!いい加減にせんかい!」                                                    「あなたこんなどこの馬の骨とも分からない卑しい女の肩を持つの?悔しい!家にも殆んど帰っていらっしゃらないくせに、よりによってこんな女のところに…ワァ~~ンワァ~~😭」


 そこに大輔が学校から帰って来た。

「パパ今度も期末テスト学年でトップだったよ。パパに褒めてもらいたくて急いで帰って来たんだ!」


「お妾さんのお子が、どれだけ頑張っても所詮はお家柄!オッホホホ」

「おばさん来てたの?またママいじめ?アッお姉さん達元気?」


「フン泥棒猫で淫乱女!そんなヨシ子の息子に家の大事な娘の兄弟呼ばわりされたくないわ!」


「なにを~?お高く泊まりやがって、第一もういい年なのに結婚も出来ない。そして出戻りって…こっちの方が恥ずかしくて姉弟止めたいわ!」


「三人で寄ってたかって私をいじめる気?人の家庭を滅茶苦茶にしたくせに———!」                     


「止めんか二人とも!」                 


 実は長女には目の周りに大きなアザが有り、幾ら元総理大臣を父に持つ由緒正しいお家柄のお嬢さんと言えども縁談話が中々上手くいかない。


 次女は次女で離婚して出戻り状態。その為本妻さんは、まだまだ美しいヨシ子と優秀な大輔が、羨ましくて、妬ましくて、そして夫の宏は殆ど家に帰らず仕舞い。あの美しいヨシ子の魅力に取り憑かれてしまった夫を見るにつけ、女である自分は女を生きる価値がないとは、絶対思いたくない。

 そんな…どうにもならない怒り💢が、妾いびりとなって益々加速している。            


 その気持ちが、分からんでもないが、まあ?ヨシ子はサンカではあるが、絶世の美女で気立ても良いので……。





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