第21話 里美とキヨシ ***♥ 

 


 一九八二年キヨシと里美は、両親の言葉をはね除け晴れて一緒に生活を…やがて里美は妊娠。


「キヨシ入籍しましょう」


 だが…サンカのキヨシには戸籍など無い。


「俺結婚出来ないんだ!戸籍が…」


「何の話?あなた…かなりいい所のお坊ちゃまなのね。何言っているの~?あなたにはちゃんとした、それも大女優のご子息という肩書が…何も気にしなくていいのよ。私もヤクザさんだからどんな素性なのか、とっても心配したけど…これで両親も何とか賛成してくれるわ~。親がうるさいから調べさせたのよ」


「えええ~❓」キヨシは、狐につままれた思いで啞然としている。


 一体どういう事なのか?                 


 実は大女優の山本光子には、お嬢さんと息子さん二人の子供がいるのだが、御主人様もかなりの資産家、代々東京の一等地に不動産所有の不動産経営者。


 一九五五年から一九七〇年かけて土地バブル到来。持ってさえいれば土地は高騰した。そんな美味しい時代が有ったのだ。                 

 その為、金持ちの坊っちゃんは格好の餌食。土地の高騰でハイエナたちの温床になっていた。

 金銭目的で丁度いじめに有っていた清輝に近付いてきた輩がいた。


 一九七〇年夏期のゴ―ルデンドラマで、丁度清輝の母親が大悪女を熱演(主演のアイドル和田麻友)が散々いじめにあう役どころ。


「我らのまゆちゃんを散々いじめたな~!」

 

 (ただでさえ資産家の父と大女優の母の息子で鼻につくのに、我らのアイドルを散々いじめるなど許せない!)結局のところ妬みなのだ。


 それを口実にクラスメイトにシカトされ、散々いじめられる羽目になった清輝。


 そんな辛い思いをしている時に助けて貰ったのが、暴走族総長のジョウだった。


 それも…柄の悪い暴走族総長など、おくびにも出さないで大学生を装い近付いて来た。実は、暴走族の中には、やくざとも繋がりがある総長もいる。


 高校一年生の山本清輝は、学校でも無視されて、更に父も母も留守がちで孤立無援状態。


 そんな時に、親切を装い近いて来たのが暴走族総長のジョウだった。行き場を失った清輝はすっかりジョウ達との楽しい時間を優先するようになっていた。


 こうして一緒にいる時間も増え、しっかり信用してしまった清輝は、ジョウに「これ吸ってみ~!嫌な事吹っ飛ぶから~」


 やがて…ヤク無しでは生きていけなくなってしまった。遊ぶ金欲しさに金持ちを薬着けにして、金にしたいばかりのジョウ。


 取り返しの付かない状態になってしまった清輝。



 それでも理解のある両親なら事態は変わっていたかも知れない。

 

 父親も代々続く由緒正しいお家柄、かなりのプライドの持ち主だ。子供の事より世間体を何より気にする鼻持ちならない男。        


「ヤクが切れると気が狂ったように暴れまくるし、家の物を滅茶苦茶に壊すし、お金の無心でどれだけのお金を散財した事か、もうこりごりだ。あんな手に負えない薬物中毒、世間様に知れたらとんでもない事に、アア……恥ずかしい!警察にでも捕まったらお家の名前に傷がつく……いっその事!」


「貴方なんて事をおっしゃるの~?まるで死んでくれと言わんばかりじゃありませんか?酷い酷すぎです!ゥゥウワァ~~ン😭ワァ~~😭」


「あんな子いらない!お前の監視不足、お前が原因でこうなったんだ。いっその事女優なんか辞めてしまえ!お前が悪い!お前の責任だ!」


「酷い~ワァ~~😭」


「あんな息子などいっその事死んでくれたら…」        


 旦那さんに責められまくって、また自らも、もうどうにも手の打ちどころがない。

(そうだ!薬物治療施設で時間をかけて治させよう)


 それでも…世間体を何より気にする夫の手前公には出来ないので、已むに已まれず、売れない時代に可愛がって貰った知り合いに相談した。実は、その相手が訳ありだった。


 そして…人里離れた薬物療養施設に入院した。

 だが……?


 🔷🔶🔷

 何故、資産家の父と大女優を母に持つ山本清輝の戸籍に入っていたのか?


 神戸に本部を持つ日本最大級のヤクザ事務所、そこの傘下が田端組なのだ。ヤバイ仕事は傘下の田端組に任せて、そして戸籍の無いキヨシは山本清輝として生きて行くことになった。


「可愛いキヨシの為に、何とか戸籍を作ってやらないと!」


 そんな時に、両親も滅多に顔を出さない、大女優山本光子の息子で廃人同然の山本清輝がX療養施設いると聞き付けた。


 そして…キヨシの育ての親、田淵組長によって山本清輝になった。


 薬物療養施設に山本清輝が存在するのに、何故戸籍を取得出来たのか?


 そこには想像できない真実が隠されていた。








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