第20話 由美子二十四歳*。・・*・。ノ♡ 

 


 愛知県半田市の老舗醤油メ―カ―〈ヤマト醬油〉のお嬢様に治まっているみよ(由美子)。


 二十四歳に成長した由美子には、降るほどの縁談話が舞い込んでいる。


だが、二十歳の頃から思いを寄せているN大学の学生さんの事がネックになり、ことごとく縁談を断り続けている由美子。


 あの日一体何が有ったのか? 

 二十歳の夏休み期間中に、偶然名古屋駅前でバッタリと会った事があるN大学の学生さん。


 相手の方は全く気付いていない様子だったが?幸子と由美子は一瞬で気が付いた。

 人混みに塗れていても頭一つ出た高身長に加えて、あの涼やかな目元と浅黒い健康的な肌に笑顔からこぼれる白い歯、まるで海を渡るイルカに乗った海の王子様。


 ツカツカ幸子がしゃしゃり出て、そのイケメン王子様に声を掛けたことがあった。


「いつも電車で拝見しています。私たちの事は気付いていらっしゃいましたか?」                          


「嗚呼…気付いていました」


「これからどちらに?」


「今から家に帰るところです」


「家はどちらですの~?」


「知多市です」


「まだ時間も早いので一緒にランチでもしませんか?」   


「ああいいですよ!」


「よく見かけてますが?な~んにも知りませんよね~お名前は?」


「二十歳で伊藤隆史といいます。普通っぽい名前です」


「見た目とのギャップがあっていいじゃないですか?」


「アッ私達も二〇歳、同級生ってことね!飯田幸子です」


「私は大和由美子です」


 すっかり気心が知れた三人は、海水浴やボ―リング、更には秋にはハイキングなどあちこち出掛けたものだ。


 ある日、三人で京都までドライブの約束をしていたにもかかわらず、幸子が家の用事で急に「行けない」と電話してきて中止になった事があった。


 理由は分からないが、幸子は「私が連絡係ね!」と言って、とうとう伊藤君の電話番号を教えてくれなかった。


 それ以来イケメン王子様伊藤君とは、会えなくなってしまった。


 実は幸子が京都ドライブの日「由美子は風邪で来れないから!」と噓を付いて二人だけで出掛けてしまったのだった。要は抜け駆け。そして二人は夜遅く帰って来た。


 そこには幸子の策略が隠されていた。









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