第18話 キヨシはどうなるのか?
キヨシは恐る恐る拾って貰った頭に懇願している。
「カシラに拾って貰い散々お世話になったにも拘わらず、こんな虫のいい話本当にすみません。カシラお願いです。田端組から足を洗わせてください。お願いします!お願いします!」
キヨシは住み慣れたこの田端組を離れると思うと、やっとまともな世界に戻れる。そう思う反面、散々悪い事もしてきたが、親方に可愛がって貰いたくて、褒めて貰いたくて悪事の限りを尽くし突っ走ってきた事を昨日の事のように思い出す。
家出少女をキヨシのイケメンぶりと甘い言葉や魅力で引き寄せ、どれだけの娘さんを夜の歓楽街に送り込んだ事か、更にはホストクラブに通ってくれる女の子たちは、キヨシ目当てに頻繁に通ってくれるが、支払いが出来なくなると上層部の鶴の一声で否応なしに風俗落ちにさせてしまった。
更には、兄貴達の酷い現場を否応なしに見てきたキヨシ………。
薬漬けにして完全に思考能力を奪い、淫欲と快楽のるつぼにいざない。又逃げ出したら最後「親兄弟を殺してやる!いいかこのアマ!」そして動けなくなる程の暴力、完全に自我を崩壊させ逃げ出そうとする気力を完全に奪い恐怖で縛り付ける。
脈々とカネの為には手段を選ばぬ極道の世界。ノミ屋、違法薬物売買、特殊詐欺、用心棒等、また弱い立場の行き場を失った女達の甘い汁を吸って生き続けている極道。
(中には耐え切れず、人知れず自殺した娘もいたな~可哀想に…)
それでも、キヨシの父が妻や子供を売り飛ばすような、とんでもない父親だったので、まだマシなような?
裏の顔は恐ろしい極悪人だが、8歳から面倒を見てもらっていた田端のオヤッサンには散々可愛がって貰った。
それというのも…オヤッサンには、子供が出来なかった。だから姐さんがキヨシを何としても息子にと目論んでいた。
その為尋常じゃない、可愛がりようだった。北海道名産品の鮮度抜群のズワイ蟹、更にはウニやホタテ加工イクラなども空輸で送って貰いよく食べさせてもらった。
「上手い!上手い!」と喜ぶ顔見たさに、日本のありとあらゆる名産品を取り寄せて食べさせてくれた。
それというのも田端組長は、思春期におたふく風邪にかかり、子供が授からなくなってしまった。
8歳のキヨシを見た時は、この子だとピ~~ンときた組長と姐さん。その為我が子同然いや⁉それ以上に思って育ててきた。
それなのに今……。
「バカ野郎!今までの恩を仇で返すつもりか?許さん!ゆくゆくはこの田端組を継いでもらおうと思っていたのに…絶対許さん!」
「カシラ俺は堅気として生きて行きたい。お願いです!許して下さい」
「お前みたいな極道が今更どんな仕事が出来るんだ。バカモンが!」
我が子同然の可愛いキヨシが「足を洗わせて欲しい!」と聞いて姐さんは大剣幕。
「折角ここまで育ててやったのに、恩を仇で返すきか!」
それでも自分もこんな裏社会で、無理矢理汚い仕事を散々やらされて来た辛い過去を思い出して(キヨシだけは堅気になって幸せに暮らして欲しい)と強く思うのだった。
「あなたここまで決意が硬いから、許してやって!」
「バカ野郎女が口をはさむでない!」
「アアじゃ~指詰めるか?金を用立てるか?一〇〇〇万円即金で?どっちかにしなはれ!あなたこれで許してやって!」
一九八五年、里美の強い希望と後押しのお陰で一〇〇〇万円を積んで足を洗ったのだが?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます