第13話 何故⁉みよは
ヨシ子は三人の子供達と引き裂かれ、半狂乱になっていたが、月日の流れとは不思議なもので、今は宏との間に坊やを授かり、いっときの平穏に浸っている。
それでも今尚引き裂かれた三人の子供たちの事を片時も忘れた事がない。
あの日無理矢理トラックの荷台に乗せられ、引き裂かれたあの日の事を……。
「いと~キヨシ~みよ~!」と叫んで懸命にトラックの荷台から飛び降りようとしたあの日の事を……。
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一九八〇年三人兄弟の末っ子みよ二〇歳は、愛知県半田市の老舗醤油メ―カ―ヤマト醬油のお嬢様に治まっている。
何故どういう事なのか?養父母の両親が赤ちゃんの内に由美子と改名。
何故ヤマト醬油のお嬢様に? 由美子も両親が養父母だ。など露とも思わずに育った。 由美子(みよ)は、赤子の内に売られてしまった。
どんな経路を辿ったのか? 由美子は、今社長令嬢となって幸せに暮らしている。 だが?由美子の動向はつぶさに監視されている。
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高度成長期で一気に事業を拡大一九五九年九月十一日、多角経営で首が回らなくなった為に、已む負えず従業員三〇〇〇人を抱えるイチイは、数百人規模の従業員を解雇。
一九六〇年四月十二日の朝七時頃イチイの生後間もない豊子お嬢様が、お手伝いさんがほんの少し目を離した隙の、朝食の準備中に誘拐された。
朝は来客など無く、新聞配達屋さんといつもの八百屋さんぐらいで、いつも通りの朝だったのだが?
「まつ一体どういう事ですか!あれだけ目を離すなと、口が酸っぱく成る程行っていたにもかかわらず💢」
「奥様お許しください!ゥゥウワァ~~ン😭ワァ~~ン😭」
イチイはあられや煎餅その他、調味料などを製造販売する大企業。
身代金要求額は五〇〇万円(現在の金額に換算一億円位)『 過去には身代金目当ての誘拐事件が多発していた』
以前発生した誘拐事件の荷の前を踏まない為に、報道機関に対して報道自粛を要請「報道協定」が結ばれる。そして新聞などで「誘拐」ではなく行方不明として報じられた。
四月十三日二十一時三十三分犯人から「子供は返すお金を用意しておくように」との電話が入る。
次の日の十四日二十二時十二分にも又身代金を要求する電話が入る。 そして…四月十五日二十一時十分犯人より「子供は寝ている。これから金を持って来る場所を指定する」との電話が入る。
四月十六日朝七時十三分にまた電話が入り「東村山市の高山屋百貨店倉庫の前の電話ボックスの中に現金を持って来い!警察へは連絡するな」との電話が入る。
母の鈴子がすぐに指定された電話ボックスへ向かったが、犯人は現れなかった。
四月十七日朝八時十分「世田谷のイチイ社長宅からほど近い上田タバコ店の裏側に三輪トラックが止めてある。そのトラックの中にお金を入れておけ、警察がいたら子供はすぐに殺す分かったな!」
そして…またしても母の鈴子が指定された場所にお金を置いてきた。 その時トラックの下に潜んでいた目出し帽の性別不明の犯人が、素早く車に乗り込み逃げてしまった。
警察の追撃に合いながらも等々逃げ切ってしまった。 そして数日後赤ちゃんは近所の久保内科の玄関先にイチイと書いた紙と一緒に、毛布にくるまれて置き去りにされていた。
社長と妻の鈴子も大喜び。だが、犯人は一体?目的は身代金要求だけだったのか?
そして…犯人の目撃情報も幾つか出て来た。
身長百六十五㎝機敏な行動から特殊訓練を受けてきた人物の可能性が?
何としても犯人確保しないと第二第三の事件が勃発する可能性が? 警察は躍起になって犯人探しに余念がない。
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