第6幕 Come with us

第17話 目覚め 1/2

「……ん……ちゃん……咲ちゃん」


「んんっ」


 愛おしい誰かの声がして目を開けると、目の前には

「おっふ」

 国宝級のアザちゃんのお顔どアップ。


「ふふふっ、相変わらず咲ちゃんの反応は面白いねえ」


「元々がガチ恋勢ですから……」


 推し――両想いになった人のあざとさに頭を抱えながらカラダを起こす。


 知らぬ間にソファに横になっていたらしい。


「おっ、起きた?」


「うん。起きたよ」


 声がした方に視線を向けると、ウァサゴちゃんが開けっ放しにした窓に背中を預けてこちらを見ていた。


 彼女の背後には、紫色のライラック。


「あっ……」


 私の視線に気がついたウァサゴちゃんは、同じように咲き誇る紫色の花に目を向けた。


「思い出したんだな」


「全部思い出してくれたよ。あの日のことも、私の正体のことも」


「そっかそっか」


 ウァサゴちゃんと話しながら、アザちゃんが腕を絡めてきた。


「およよよよよよよ」


「ねぇ、さっき言ったでしょ。もっとフレンドリーに接してって」


 言われましたよ、覚えてますとも。


「いっ、いきなりは無理……です」


「敬語禁止」


 腕を引こうにも微動だにしない。


 貴女、滅茶苦茶力強いじゃん。


 あざとくて可愛いのに。


 なにそのギャップ。


 惑星1個吹き飛ばせるぐらいのギャップですよ。


「わかった? 敬語禁止、ね」


「はっ……うん」


 いきなりは無理と言ったけれど、首をコテンと傾けられて言われたら逆らえません。


 推しが言うことは絶対なので。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る