第16話 REMEMBER 2

「因みに、他の4人もだからね」


「そうだよね」


 アザちゃんと一緒にいるんだから当たり前。


 天使だから年をとらないんだ。


 不思議な魅力があったのは、彼女たちが天使だったからなんだ。


 とんでもない事実を思い出したくせに、何故だかどんどん頭は冷静になっていく。


 いや、違う。


 あのお姉さんたちがアザちゃんたちだとわかって、滅茶苦茶嬉しい。


 だって、約束を守ってくれたんだもん。


「言ったでしょ、また会えるって」


「うん。思い出すのが遅くなってごめん」


 毎朝「嘘つき」って言ってごめん。


 でもね、心の片隅で信じてたんだ。


 信じていれば必ず会えるって。


「それじゃあ、そろそろ出よっか」


「え?」


「もうガラスの箱に閉じこもって、思い出にすがる必要はないでしょ」


 このガラスはそういう意味だったのか。


 顔がぼやけていても、出会ったことを忘れてしまわないように自分で作った箱だったんだね。


「でも、どうやって出るの?」


「それはねえ……アザちゃんに任せなさい」


 ふふふっ、と笑った彼女は

「えっ」

 真っ黒な翼をバサッと広げた。


「黒い……」


 あの頃は真っ白だったはずなのに。


「あ、気になる? まぁ気にしないで」


 無理無理無理。気になります。


「好奇心旺盛なのはいいことだけど、これは内緒」


「うぐっ」


 人差し指を唇に当ててウインク。


 無理無理無理無理無理。心臓が終わる。


 夢の中でもあざとすぎるって何事ですか。


 んんんんんんんんんん、天使だからなんでもアリなんですかね!?


「じゃあ、現実に戻ろっか。みんな待ってるだろうし」


「……はい」


 差し出された左手に右手を重ねる。


「ふふふっ、かたいなあ。戻ったらもっとフレンドリーに接してね」


 そんなことを言いながら、アザちゃんは手をグッと引き寄せた。


「ふぁっ」


 暗闇のように黒い翼で私を包み込み、

「えいっ」

 可愛らしい声とは対照的に、力強くガラスをぶん殴った。


 その様子がスローモーションに見えて、ガラスの破片が飛び散る音は聞こえなくて。


 私の意識は再び闇へと沈んだ。

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