第16話 REMEMBER 1/2

「……あれ」


 目の前には、幼い私とお姉さんたち。


 相変わらず私はガラスの箱に閉じ込められたまま。


「いつの間に寝ちゃったんだろう」


 さっきまでアザちゃんと話していたはずなのに。


「って、え?」


 今までお姉さんたちの顔はぼやけて見えなかったはず。


 それなのに、

「あれって」

 少しずつハッキリと見えてくる。


「そんな、まさか」


 目を見開いて、近づけやしないのにガラスの窓にはりつく。


「嘘でしょ」


 私にライラックを教えてくれたのは、AN-gelエンジェルの5人だった。


「なんで」


 お姉さんたちと出会ったのは20年も昔のこと。


 それなのに、彼女たちの姿は今とまったく同じで。


 意味がわからない。


「そっくりさんってこと?」


「違うよ」


「ふぁっ!?」


 独りぼっちだったはずのガラスの箱。


 突然聞こえてきた声に驚いて後ろを振り返れば、アザちゃんが立っていた。


「どうして……」


「ふふふっ、よく考えて。思い出して。咲ちゃんは知ってるはずだよ。アザたちの正体を」


 戸惑う私に微笑んで、彼女は箱の外を指差した。


 そこには、大きくて綺麗な翼を広げるアザちゃんの姿と、ポカーンと口を開けて間抜け面の私。


「あぁ……そうだ。そうだった」


 どうしてこんな大切なことを、大切な思い出を忘れていたんだろう。


 アザちゃんは人間じゃない。


 穢れのない天使なんだ。


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