第14話 孤独の終わり 3

「大丈夫、大丈夫だよ。これからはアザたちが一緒にいるから、寂しくないよ。辛いことも楽しいことも、分けっこしてこ」


 ぎゅっと抱き締めてくれたアザちゃん。


 その胸元が涙で濡れてしまうのを申し訳なく思いながらも、抱きしめ返してしまう。


 ずっと誰かに救ってほしかったから。


 抱きしめてほしかったから。


 孤独を癒してほしかったから。


 だけど、

「私なんかが一緒にいてもいいの」

 ただのファンが。


 ただの、アザちゃんガチ恋勢が。


 震える声でそう言えば、推しは更に強く抱き締めてくれた。


「いいんだよ。だって咲ちゃんだから。咲ちゃんがアザを好きでいてくれるように、アザも咲ちゃんのことが大好きだから」


「……好きのベクトルが違うよ」


 否定してしまうのは、自己肯定感が低いからじゃない。


 事実だから。


 アイドルだった彼女と私の『好き』が同じなはずがない。


 本気で好きなんだ。


 これまで出会った人よりも愛してるんだ。


 そんなの伝わりっこない。


「ううん、一緒だよ」


 そんな私の言葉を、抱きしめる力と同じくらいにアザちゃんはきっぱりと否定した。


「アザはね、咲ちゃん。貴女のことが本気で好きなの」


「え?」


 嘘でしょ。冗談でしょ。


 私をからかってるんでしょ?


 胸元から顔をあげ、思わず彼女の顔を見つめる。


 アザちゃんの顔は真剣そのものだった。

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