第5幕 Lilac

第14話 孤独の終わり 1/3

「おっ……お風呂ありがとうございました」


 ラハシュちゃんに借りた服を身につけて、リビングに戻る。


 最推しのアザちゃんの服は丈が足りないから着られませんでした。


 残念。


 じゃない。


 推したちの居住空間に存在してるんだぞ、私。


 こんな幸せなことがあってもいいのか。


 何度だって言うよ。


 握手会よりもチェキ会よりも凄いイベントを体験してるんだぞ。


 照れるどころの話じゃない。


 ヤバイ、ヤバイ、ヤバすぎる。


 語彙力がなくなった。


 なんでこんな展開になったのか、って考えていたら湯舟に水没しそうになったのは内緒。


「うん。あったまれた?」


 あぁ、アザちゃんの笑顔が尊い。


「はい、本当にありがとうございました」


「そんなにかしこまらなくていいよ。自分の家だと思ってくつろいで」

 ほら、と推しがソファの座面を叩く。


 およよよよよおよよよよよよ。


 マジですか。


 ソファを背もたれに座るグザファンちゃん、ラハシュちゃん、オルニアスちゃん。


 対して、ソファにゆったりと座っているアザちゃんとウァサゴちゃん。


 そして不自然に開けられた2人の間。


 まさかと思いますが、そこに座るんですか。


 センターですよ。いいんですか。


「咲ちゃん?」


「はいっ」


 思考を宇宙の彼方へ飛びそうになっていたから、アザちゃんに声をかけられて声が裏返ってしまった。


 失態。


「ふふふっ、やっぱり咲ちゃんは可愛いねえ」


 いやいや、可愛いのは貴女です。


「ほら、おいでよ」


 やめて。首を傾けないで。


 あざとすぎて心臓がもたないから。


 いや、もう限界突破してるんですけれども。


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