第13話 天使たちの家 1/3

「ほい、着いたよ」


「ここが……」


 コンビニから歩くこと15分。


 彼女たちが住むという家は、住宅地の一角にあった。


 ごくごく普通の一軒家。


 私の家とは反対方向だけど、ほんとに近くに住んでたんだなあ。


 アザちゃんに手を引かれるまま敷地に足を踏み入れる。


 ピンポーン。


 傘をさしたまま、彼女は何故かインターホンを押した。


 何故って、そりゃそうか。


 両手ふさがってますもんね。


 私の手を離してくれたら良かったのに。


 いや、好きな人とずっと手を繋いでいられるのは得でしかないんだけれども。


 できればずっと繋いでいてほしいんだけれども。


 そんな願望は心の奥にしまっておこう。


 あと、この雨にも感謝。


 手汗をかきまくっているだろうけど、ついさっきまで雨に濡れていたおかげで誤魔化せてる。


 多分。


 ガチャ。


「はいはーい、ってアザじゃん。あんた鍵持ってるんだから自分で……」


 不満を言いながら玄関のドアを開けたのは、ラハシュちゃんだった。


「……」


 フリーズ。


 私を見て目を見開いたまま。


「咲ちゃん見つけてきたよお」


「……グッジョブ」


 さっきまでのフリーズはなんだったのか。


 右手の親指を上げて、ラハシュちゃんは

「みんなー、咲ちゃん! 咲ちゃん!」

 私の名前を連呼し始めた。


 え、なに。私ってそんなに人気者だったの。


 疑問がガッツリ顔に出ていたんだと思う。


「アザだけじゃなくて、みんな咲ちゃんと再会できるのをずっと待ってたんだよ」


 ちょっぴり苦笑しながらアザちゃんが言った。


「そうなんだ……」


 そんなこと言われたら、更に体温が上がるからやめてほしい。


 まぁ、ガチ恋って知られてる時点でね、うん。


 思い上がりかもしれないけど、両想いみたいで嬉しい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る