第4幕 savior
第10話 火事再び、三度
「今朝、××ビルが火事に――」
「は?」
床に座ってぼんやりとTVを眺めていたら、会社が火事になってなくなっていた。
何人か会社にいたみたいだけど、みんな無事に逃げられたみたい。
ただ、
「東京都××で住宅が――」
「あれ」
続いて流れてきた火事のニュース。
犠牲者の名前は、大嫌いな上司の名前だった。
「自殺……?」
ニュースキャスターはそう言ってる。
本当にそうだろうか。
パワハラ・セクハラしまくりの上司が、自殺なんてするだろうか。
そう思ったのが数日前。
「先日自宅に火を放って自殺を図った△△が、岩辺さんが勤めていらっしゃった会社と、実家に火を点けた犯人と判明しました」
そう警察から連絡を受けたのが今日。
「なんで自殺したの」
ちゃんと罪を償ってよ。
アンタが死んじゃったら、私は誰を恨んで生きていけばいいの。
神様は意地悪だ。
恨みを抱いてなら生きていけると思ったのに。
もう、本当に生きている意味がなくなってしまった私。
ずっと家に引きこもっている。
窓のカーテンすら開けず、ぼんやりとTVを眺めて。
冷蔵庫を漁ったり、カップ麺を食べたり。
なにもしたくない。
動きたくない。
部屋を出たくない。
でも、
「食べるもの……なくなっちゃったな」
生きていればお腹が空く。
なにもしていなくても。
「仕方ない」
財布とスマホを持って、アパートを出る。
こういうとき歩いて数分のところにコンビニがあるのは便利だ。
生きる意味を失ってしまったけれど、食べて命を繋いでいるのは、アザちゃんたちにまた会いたいから。
彼女の言葉を信じているから。
馬鹿みたいだと笑われてもいい。
たしかに、アイドルだからみんなに同じようなことを言っていたかもしれない。
それでもね、私は信じる。
大切な推しの言葉を。
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