第9話 誰もいない
警察の検視が終わり、私は3人の遺体を引き取り、葬儀をして。
家族葬にして親戚だけを呼んだけれど、近所の人も数人来てくれた。
みんなに優しく言われる、
「残念だったね」
「火事だなんて」
「早く犯人が捕まるといいわね」
空しかった。その言葉の全てが。
私の家族を殺した放火犯は捕まっていない。
早退したあの日から、会社には行っていない。
永遠に鳴り続ける電話を無視して、無断欠勤。
やる気も、生きる理由も、働く理由も失ってしまった。
火事で亡くなった家族を火葬している最中、笑いそうになってしまった。
すでに身を焼かれているのにね。
これ以上焼くなんて拷問じゃん。
涙を流さず笑う私は、みんなの目には薄情者か頭のイカれたヤツと思われていることだろう。
どうだっていい。
なにを言われたっていい。
私は、私の大切なものを奪った犯人を許さない。
でも自分では見つけられないから、警察が捕まえてくれるのを待つしかできない。
もどかしい。
早く、早く見つけてよ。
神様、お願いします。
犯人に罰を与えてください。
でないと、私は
妹の学費のためにスーパーで働いていた母。
ブラック企業に入ってしまった私を一番心配してくれた父。
大学生になって、楽しいキャンパスを送っていた可愛い妹。
毎晩みんなが夢に現れるようになった。
AN-gelちゃんたちも。
ガラスの箱に入った私の周りに立って、公園でお姉さんと話す幼い私を眺めている。
話しかけても、誰も答えてくれない。
ただじっと、私を見つめるだけ。
ねぇ、せめて夢の中だけでも話をさせてよ。
二度とこの世で会えないのなら。
いや、アザちゃんは言ってたよね。
また会えるって。
信じていれば、必ず。って。
だったら会わせてよ。
私の枕は、目覚める度に涙で濡れている。
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