第8話 喪失
アザちゃんたちがいなくなっても、日は昇り沈んでいく。
休みがまともにとらせてもらえない毎日は続いていく。
なんのために働いているのかわかなくなったまま出勤する毎日。
そんな仕事の最中、スマホが鳴った。
「あっ」
しまった。マナーモードにしておくのを忘れていた。
慌ててスマホを手に取ると、知らない番号からの電話。
「誰だろう」
多分間違い電話。
けれど、妙な胸騒ぎがする。
上司が同僚にブチギレているのをいいことに、こっそりと廊下に出て、スマホをタップした。
「もしもし。はい、
間違い電話じゃなかった。
坦々と紡がれる言葉に、頭が真っ白になる。
「えっ……嘘ですよね」
信じたくない。
信じられない。
私の実家で火事が起きて、身元不明の3人の遺体が発見されたなんて。
「そんな、まさか」
今すぐ病院に来てほしいと言われ、
「すっ……すぐに向かいます」
パニックになりながらもなんとか答えた。
母、父、大学生の妹。
実家にいるのはその3人しかありえない。
早退することに対してごちゃごちゃ言われながら荷物をまとめ、急いで病院に向かった。
お願いだから他人の遺体であってほしいと願ってしまうのは、仕方のないことだと思う。
だけど、現実は残酷で、無情だった。
酷い火傷に全身を覆われた遺体は、間違いなく大切な家族だった。
「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして――」
泣き崩れる私の背を、女性の警察官が優しく撫でてくれた。
タクシーで移動中、何度も何度も電話をかけたけど誰も出なかった家族。
ストレスで頭がおかしくなりそうで、苦しくて死にたくなったとき、心の支えになってくれた家族。
神様は、私の大切なものを全部取り上げてしまった。
アザちゃんたちも家族も。
もう私を支えてくれる人はいない。
どこにも。
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