第5話 推しの可愛さは死亡案件
月に数回――片手でも余るほどしかない休み。
あれから同期とは一度も休みがあっていないから、いつもボッチ参戦。
寂しい? いいえいいえ、とんでもない。
AN-gelちゃんたちは来るたびにファンが増えていって、嬉しい限りです。
アザエルちゃんが一番人気で握手会の列が長くなってしまったのは、嬉しいような悲しいような。
ファンが増えることはいいことだよ。
勿論。
でもねえ、私はアザエルちゃんを独り占めしたいんですよ。
好きで好きでたまらないんですよ。
彼女と出会って、彼女に貢ぐために仕事を頑張れるようになったんですよ。
あの会社にい続ける意味ができちゃったんですよ。
どうだ。私の想い。
面倒で鬱陶しくて重いだろっ。
心の中で悪態をつきまくっていたら、
「咲ちゃん?」
「はっ」
もう私の順番が来てました。
優しく柔らかく、私の手を握ってくれるアザエルちゃん。
「今日もアザエルちゃんが可愛かったよ」
「えー嬉しいっ」
やばい、今日も今日とてこの子の笑顔が素晴らしい。
珍しくツインテールだし。
可愛さ爆増につき、語彙力消滅。
「ねぇ、そろそろ呼び方変えてよぉ」
「えっ?」
首をコテンと傾けられて言われました。
ぐへっ。
心臓が血を流しています。
じゃなくて、
「呼び方?」
「うん。ずーっと『アザエルちゃん』って嫌だなあ。みんなとおんなじだし」
キュルンと音がしそうなほど大きな瞳で見つめないで。
これ以上は心臓がもちません。
「えーっと、そっか」
推しの要望ならば、叶えなければ。
「うーん」
悩んでいる暇はない。
私がずっと呼びたいと思っていた呼び方があるじゃん!
「それじゃあ、アザちゃん……でお願いします」
「ふふふっ、わかった。それじゃあ、また後でね」
係りの人が強制的に私とアザエルちゃ……アザちゃんを引き離したけれど、そんなのどうだっていい。
どうせまた並ぶし。
それに、嬉しそうな顔してた!
ニコって口角上げて!
もう推しが可愛くて死にそう。
因みにこの日は、チェキに『咲ちゃんは私のオキニだよっ』と書いてもらって、いつも通り心臓をget youされたました。
誰か、推しを『可愛すぎる罪』で逮捕してください。
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