第4話 人生初のライブ 3

「初めまして!」


「はっ、初めまして」


 手を握られて心臓が止まるかと思った。


 ステージで歌って踊るアザエルちゃんも可愛かったけど、間近で見ると倍以上可愛い。


 えげつない。


 可愛さでぶん殴られてる気分。


「来てくださってありがとうございます」


「いっ、いえいえ」


 しまった、握手のときなにを話せばいいのか同期に聞くのを忘れた。


 こういうときってみんななにを話しているの?


 というか、アザエルちゃんが可愛すぎて言葉が出てこない。


「お名前、聞いてもいいですか?」


 私みたいな挙動不審な人の対応に慣れているのか、彼女の方から話を振ってくれた。


「さっ、さきです」


「咲ちゃんかあ、可愛い名前だねっ!」


「はいっ」



 これが、私とアザちゃんの出会い。


 アイドルに心を奪われて、休みのたびにライブ参戦して、握手・チェキ会に参加するようになった、オタク人生の始まり。


 この後チェキを撮って、『咲ちゃん、また来てね♡』と書いてもらって、心臓を撃ち抜かれたのは、詳しくは思い出さないでおきます。


 滅茶苦茶恥ずかしいので。

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