第2幕 Fall in LOVE

第4話 人生初のライブ 1/3

岩辺いわなべさん、アイドルって興味ある?」


「ないです」


 2022年、5月。


 いつものように残業をしていた私たち。


 仕事の邪魔をされたのが腹立たしくて素っ気なく返したのに、

「最近出てきたんだけど、中毒性があってさ、地下アイドルやってるのが不思議なくらい美人で可愛いの! 歌もダンスも、そこら辺のアイドルより上手いんだよ」

 だから一緒にライブ行こう!


 私よりも酷い目の下のクマが気にならないくらいの熱量で、勢いで迫ってきたのは、唯一の同期。


 本当はもっといたんですけどね。みんなどこかへ行ってしまいました。


 そのせいで仕事量が増えてんだよ。恨むぞ。


 まぁね、こんな会社で働き続けたくないっていう気持ちはわからなくもないけど。


 私はただ、転職するのが面倒で残っているだけです。


「明日休みだよね」


「休みだよ」


 だから家でゆっくり寝たいんだよ。


 なんで漸く訪れた休みを、興味が1mmもないアイドルに、しかも地下アイドルに。


 と思っていたのに、結局同期の押しに負けて、ライブに来てしまった。


 頼まれたら断れない性格、押しに弱い性格、どうにかしたいですね!


 たった数十人しかいない客席で後悔したところで遅いんですがね。


「はぁ……」


 ため息をついている間に照明が暗くなって、ステージにスポットライトが当てられた。


「みなさん今日は来てくださってありがとうございます!」


 袖から元気よく出てきた5人の女の子。


「初めましての人も、何度も来てくださっている人もこんにちは!」


 センターに立って明るく、スポットライトに負けないぐらい明るい笑顔を見せた可愛い女の子。


「え……」


 何故だか鼓動が大きくなって、体温が急上昇。


 目を奪われてしまった。


「リーダーのグザファンです」


「セクシー担当、ラハシュ」


「元気担当、オルニアスです!」


「ボーイッシュ担当、ウァサゴ」


「可愛い担当、アザエルです。私たち5人で」


「「「「「AN-gelエンジェルです」」」」」


 どうしよう、まだ登場しただけなのに、曲を聴いてもいないのに。


「それでは聴いてください、私たちのデビュー曲で――」


 アザエルちゃんに心を奪われてしまった。


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