貴女が望む世界へ

第2話 ガチ恋勢ですが何か 2

　地上波への出演ゼロ。

　2022年に彗星のごとく現れた、知る人ぞ知る存在。

　ライブのキャパはMAX500人。

　公式SNSをやってるし、頻繁に呟くし、生配信だってしてくれる。

　けれども、星の数ほどいる地下アイドルの中では滅茶苦茶埋もれた存在。

　なんで人気出ないんだろうなあ……みんな可愛いのに。

　リーダーで、グループのお母さん的存在の癒し担当『グザファン』ちゃん。

　かき上げ前髪がカッコよくて、くびれが凄いセクシー担当『ラハシュ』ちゃん。

　天真爛漫で、一番身長が低い元気担当『オルニアス』ちゃん。

　ボクっ娘（こ）で、一番身長が高いボーイッシュ担当『ウァサゴ』ちゃん。

　そして私の推しが、とっても可愛くて、ぶりっ子しても全然ウザくない、キュルンと音がしそうなほど大きな瞳のセンター『アザエル』ちゃん。

　因みに、全員年齢非公開。

　以前年齢を聞いてみたら、

「永遠のティーンエイジャーです。人間じゃないので」

　とアザちゃんに首をコテンと傾けられながら言われました。

　心臓が撃ち抜かれたのは言うまでもない。

　なんであんなに可愛いんだろうなあ。

　オン眉の前髪も、顎下までの姫カットも、腰までのロングヘアも。

　他のメンバーがカラフルなヘアカラーなのに、一人だけ今どき珍しい漆黒な髪色なところも。

　子どもっぽいお顔立ちも、全てが可愛い。

　可愛すぎる。

　可愛いは正義、って、多分アザちゃんのためにあるんだと思う。

　なんてことを考えていたら、

「咲ちゃんっ、さっきぶりだね」

　ふふふっ、と笑う推しが目の前にいました。

「うぐっ」

　何度見ても見慣れない推しの可愛さに、今回も心臓が撃ち抜かれました。

　サヨナラ世界。

「咲ちゃぁん？」

　首を傾けないでください、鼻血が出そうです。

　瀕死の状態で条件反射的に手を差し出した私を褒めてください。

　全オタクよ、見習いたまえ。