第2話 ガチ恋勢ですが何か 1/2

「咲ちゃんっ、久しぶりだね」


「アザちゃぁぁぁぁぁん、ホント久しぶりっ」


 推しの手を握る手に力が入っちゃったのは許してください。


 なんせ、本当に久しぶりな握手会なもので。


「痩せた? 大丈夫? ちゃんとご飯食べてる?」


 おーん、推しに心配させてしまった。


 オタクとして失格です。


「食べて……る」


 ちょっと視線を逸らしながら言ったら、

「ふふっ、咲ちゃんは嘘つきだねえ」

 秒で見破られました。


「あははっ、嘘ついて――」


「はい、お時間でーす」


 ちょい待て、私はまだ話したりない。


 推しを補充できてない。


「また後でねー」


 係りの人に誘導される私に、アザちゃんは口角を上げて手を振ってくれた。


 はぁ……愛おしい。


 可愛い。もうね、全部が可愛いのよ、うちの推しは。


 手の温もりを忘れないように心に刻みつけながら、列の後ろに並び直す。


 はい、そうです。「また後でね」というのは、こういうことです。


 こちとらライブの後の握手会、チェキ会のために死ぬほどCD積んでんだ。


 この日のために過酷な労働に耐えてんだよ。


 さてさて、次はなにを話そうかなあ。


 ちゃんと事前に考えておかないと、すぐに順番が来てしまう。


 なんてたって、私の推し『アザエル』ちゃんが所属する5人組女性アイドルグループ『AN-gelエンジェル』は、『地下アイドル』なんだから。


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