第一章 猫耳パーカーVtuberのウラ事情
第1話 最悪で最高の再会
3月の終わり、人々は新生活に向けて準備を行っている。
来月から高校生になる僕もその一人だ。丁度、その為の買い物を終えたばかりだ。
そして現在、信号に引っかかっております。かれこれ5分くらい待っております。
「ったく、長いな」
「そうですね。いつもはこんなに待たないのに」
隣に待っていた人が僕の独り言に応えた。
「これってもしかして押しボタン式じゃ……」
辺りを見回すと、ボタンがあった。低めの位置にあったから気付かなった。
「ボタンあったので押しますね」
「お願いします」
ボタンを押すと、直ぐに信号が赤から青に変わった。
そして、横断歩道を渡ろうとした瞬間、左から自動車が迫っているのに気付いた。この感じだと止まりそうにないな。一方で、僕の隣りにいた人はそれに気付かずに渡ろうとしている。このままじゃ轢かれる。
「危ない!」
僕はその人の腕を思いっきり引っぱった。
「ひゃっ」
その人が歩道に戻ってきた直後、車が目の前を通り過ぎていった。
「ギリギリセーフ。ケガはありませんか?」
「だ、大丈夫で……」
その人の顔を見た瞬間、僕は気付いた。
「か、歌奏!?」
「き、煌莉!?」
僕が助けた人は、幼馴染みの
「ひ、久しぶり。確か小学校以来だよね。元気にしてた?」
「……うん。煌莉にまた会えるなんて、私とっても……、嬉しい」
歌奏は、そっと僕に抱きついてきた。
「この後予定ある? 無いならちょっとどっかで遊ばない?」
「うん……。それなら、行ってみたかったクレープ屋さんがあるの。一緒に行かない?」
「に! りょーかい」
―――――――――――――――――
クレープを買った後、僕たちは近くにあった公園のベンチに座った。
「ん〜、このクレープすごく美味しい」
「そうだね。甘過ぎないし、いくらでも食べられそう」
「でも、たくさん食べちゃうと体重が……」
「……うん」
なんか、気まずい空気になってしまった。なんとかしないと。
「……そうだ!クレープ交換しない?その味のを食べてみたいし」
「そ、そうだね。そうしよ」
そう言って、クレープを交換し、食べようとした瞬間に気付いた。
「これって間接キスじゃん」
「た、確かに。でもさ、昔そういうのよくやってたし、別に気にすること無くない?」
「昔はね。今やると、周りから『リア充爆発しろ』っていう目で見られるからね。ま、どうせそいつらも恋人ができたら、同じような目に遭うんだろうけど。人にされて嫌なことは人にしちゃいけないって教わらなかったのかなぁ。ていうかそもそも、恋人が出来ないのは、あいつらが本気でやってないからだよね。僕は無関係なのになんで恨まれなきゃいけないのかなぁ。バカなのかなぁ?」
「き、煌莉。目から光が消えてるよ」
歌奏をの方を見ると小刻みに震えてしまっている。怖がらせちゃったかな?
「あっ、ごめん。つい……」
「ベ、別に大丈夫だよ。それに、ここには子供しかいないし、大丈夫だよ」
「まあ、それはあのガキ共がちゃんとした教育を受けていればの話だけどねぇ」
「わ、わかったから、いい加減食べて!」
クレープを一口食べてみる。とても美味しい。美味しいのだけれども、それ以上に心臓が五月蝿い。
このクレープには歌奏が食べた跡があって、それには少量の歌奏の唾液、可能性としては口内の細胞もついている訳で、僕は今歌奏の体を食べたと言っても過言ではないってことでしょ。僕の体の中に歌奏が入ったとも言えるでしょ。
「煌莉、顔が赤くなってるよ」
「顔面茹でダコ状態の奴に言われたくないわ」
―――――――――――――――――
クレープを食べ終え、僕たちは少し休憩をしていた。
「そろそろ帰らないとな」
「ちょ、ちょっと待って」
僕が立ち上がろうとすると、歌奏が僕の腕を引いた。
「歌奏、どうしたの」
「その、さ。私……、Vtuberになりたいんだ」
「え。あ、うん」
「でも、一人じゃ不安だから……」
「はい」
「煌莉も一緒にやってほしいの!」
「知 っ て た」
正直に言って、『Vtuberになりたいんだ』の時点で自分が巻き込まれることは察してた。
そして、その次の『一人じゃ』で、自分もやらないといけないのはわかってた。
「煌莉、どうなの?」
「別にいいけどさぁ、ちゃんと計画立ててる?」
すると、歌奏は目を左にそらした。
「やっぱり立ててない。お前本当計画性無いよな」
「で、でも煌莉ならそこら辺やってくれるかな~って」
「プレゼンターならもっと事前準備してこいよブァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッカ」
「うぇぇ、酷いよ煌莉〜」
まあ、一応自分には、イラストレーターとモデリングをやってくれる人にはあてがある。動画編集のやり方とかも教えてくれるだろうし、そこら辺は大丈夫だろう。
「歌奏、一応そのことなんだけどさ……」
「私の事務所に来ない?」
「「ひぇい??」」
声のした方を向くと、そこには金髪の女性が立っていた。
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