塾長の秘密 夏合宿

 朝早くから太陽は容赦なく照りつけ、セミの声が耳をつんざくように鳴り響いている。

 集合場所である塾の裏にある駐車場の日の当たらない場所で、本田と山下と3人塾長が迎えに来るのを待っていた。


 今日から3泊4日の勉強合宿が始まる。

 3人とも3泊4日分の着替えの入った大きなバッグを抱えている。

 荷物も重いが、これから始まる合宿のことを思うと気も重い。


 セミの声に負けない程大きなエンジン音を響かせながら、真っ赤な高級車が駐車場に入ってきた。

 流れるようなハンドルさばきで駐車場の白線ときれいに平行に車を止めると、ドアが開きサングラスをかけた塾長が姿を見せた。

 いつものスーツ姿ではなく、ノースリーブの花柄のワンピースを着ている。

 本田と山下とともに、荷物を抱えながら塾長のもとへと駆け足で向かった。


「お待たせ」

「おはようございます」

「さあ、乗って。荷物はトランクに積んでね」


 トランクを開けるためにくるりと体を回すと、塾長のワンピースがフワリと舞い上がった。


 3ナンバーの高級車の車内は広く、3人が後部座席に座ってもゆとりがあった。

 憂鬱な僕たちとは対照的に、バックミラー越しに見える塾長は真っ赤な唇の口元が緩んでおり楽しそうだった。


◇ ◇ ◇


 朝早く混んでいない高速道路を走る事1時間、海辺の街に塾長の別荘はあった。

 海を一望できる高台に建つコテージの前で車が止まる。


 塾長に続いてコテージの中に入ると、全面ガラス張りのオーシャンビューの景色が広がっていた。

 広いリビングには椅子と机が2台ずつ3列並んでおり、その前にはホワイトボードが置かれてある。


 塾長はウッドデッキのテラスに置いてある、バーベキューセットを指さした。


「夜は、外のテラスでバーベキューだから楽しみにしておいて」


 テンション高く楽し気に塾長は言うが、肉ぐらいでは僕たちのテンションはあがらない。


「じゃ、まず着替えてもらおうかな。君たちの部屋は2階の手前側の部屋だから」


 トボトボとした足取りで、階段を上り2階の部屋へと入った。

 部屋の中はベッドが3つ並んでおり、この部屋からも海が一望できる。

 本来ならこんな素敵な環境で勉強合宿ができることを喜ぶべきだろうが、喜べない原因はクローゼットの中に入っていた。


 壁際にあるクローゼットを開けると、そこにはいつも通り制服がかかってあった。

 思わずため息が出てしまうが、着替える以外に選択肢はないし制服に着替え始める。

 一緒に入っていた今日の下着は新色の薄紫。真新しい下着に少しだけテンションが上がる。

 ブラをつけながら本田がつぶやいた。


「ブラも慣れると、この締め付けられる感触が良いよね」

「わかる、わかる。スカートも夏だと、涼しくていいね」


 女子の制服を着るようになって3か月以上が経ち、塾長のお仕置きは相変わらず恐怖だが、かわいい下着や制服が着られる喜びは感じられるようになってきた。


 3人とも女子制服に着替え終わったところで、部屋をでると1階から楽しそうな話声が聞こえてきた。


 塾長以外に誰かいるのかなと思いながら、1階に降りると3人の女子生徒が塾長と立ち話していた。


「花恋!?どうしてここに?」


 同じ塾に通う花恋の姿を見て、思わず叫んでしまった。


「私たちも特別合宿に呼んでもらったの。塾長とは別の車で送ってもらって、今着いたところ」

「玲奈も夏希も?」

「うん、そうよ。海斗、意外と制服似合ってるじゃない、可愛いわよ」


 花恋が揶揄うような笑みを浮かべ、僕のスカートを触った。

 とくに驚いていない様子を見ると、3人が志望校の女子制服を着ていることは塾長から聞かされていたようだ。


 まさか、花恋がこの合宿に参加するとは思ってもみなかった。


 3月まで同じAクラスで勉強していた花恋。その長い黒髪を高く結んだポニーテールと澄んだ瞳と小さな鼻、そして魅力的な薄いピンクの唇に、僕の心は奪われほのかな恋心を抱いていた。

 そんな花恋も同じ海邦学院を第一志望にしており、一緒に合格できるのを夢見ていた。


 本田も山下も下を向いて、足をモジモジとすり合わせているところをみると、一緒に参加している玲奈と夏希はそれぞれ恋心を抱いていた女子生徒のようだ。


 塾長が女子3人にいつも使っているハリセンを1本ずつ渡した。

 受け取った花恋は感触を確かめるかのように手の平に軽く打ち付け、玲奈に至っては野球選手の様にブンブンと素振りをし始めた。


「車テストで間違えた分だけ、お仕置きね。山下さんは15回、本田さんは9回、堀口さんは17回ね」


 このコテージに来るまでの間、塾長は運転しながら計算問題や「ミカンの生産量4位の都道府県は?」などの問題を次々に出題してきた。

 間違えた分お仕置きが待っているとは思ったが、まさか花恋たちにされるとは思わなかった。


 いつものようにスカートをめくり、下着が見えるお尻を花恋の前に突き出すと、叩く場所を探すかのように撫でまわし始めた。


「かわいいお尻ね。じゃあ、いくよ」


 パシーンという音と共にお尻に痛みが走った。

 塾長に比べて女子小学生の力は弱く痛みは少ないが、それでも恋心を寄せていた女子に女装した姿でお尻を叩かれる恥ずかしさで顔が熱くなってくる。


 17回お尻を叩かれ顔を上げると、本田と山下も顔を真っ赤にして今にも泣きだしそうな表情をしていた。


「さあ、勉強始めるよ。席に座って」


 車でのテスト成績にあわせて、前から本田、山下の順に座って3列目の椅子に座ると隣の席には花恋が座った。

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