第五章 六月二十二日 嵐前夜

 六月二十二日深夜。東京某所。寂れた廃ビルの地下。

 漆黒が支配するその空間の一角に、小さな明かりがともっていた。登山などで利用される手持ち式のランプが天井にぶら下がっていて、その真下に一人の男が座っている。

 年齢は四十歳前後。薄汚れた服を着崩し、その顔は目を閉じながらもにやけた薄笑いを浮かべている。その格好といい、一見するとどこかの浮浪者と見間違えかねない。

 だが、その男の前の床に広がっているものを見れば、そんな感想が全くの見当違いである事は一目瞭然だった。拳銃、ナイフ、爆薬、スタンガンなどはほんの序の口。ショットガン、マシンピストル、サブマシンガン、アサルトライフル、スナイパーライフル、果てはロケットランチャーまで。考えられるだけのありとあらゆる武器がそこには揃えられていた。

 武器商人「村井」。日本の裏社会最高の武器調達屋としてその名を知られ、日本を本拠とする裏社会の人間の中では国外でも精力的に活動。各国に多くの顧客をもち、その方面では出雲クラスの怪物とまで呼ばれている人物である。何しろ、武器密輸に関しては世界最高クラスに厳しい日本に、これだけの武器を持ち込む事が可能な人間なのだ。

 もちろん、これだけの武器商人相手にその辺のチンピラ程度がまともに取引できるわけがない。というより、村井にとってはこの日本も世界各地にある一市場の一部に過ぎないので、一定の大口の顧客がいればそれで充分なのである。現状、日本で村井と取引できるのは、東京、大阪、札幌、広島、福岡にそれぞれ本拠を置く五大暴力団と、七十年代以降公安の捜査対象になっている過激派「血闘軍」、そしてもう一人……。

「……」

 不意に、村井は薄目を開けて闇の奥を見つめた。カラカラとキャスターの音が響き、それに混ざってローファーの足音が近づいてくる。

「……お前さんか」

「お久しぶりでございます」

 最後の顧客……日本最高の殺し屋・復讐代行人こと黒井出雲が、いつも通りの微笑みを浮かべながら闇の中から姿を現した。が、それを見ても村井は表情を崩す事はない。

 すべてにおいて余裕を見せる出雲にとっても、この男だけは気を抜く事ができない。現状、日本の裏社会の中で唯一出雲と対等に口を利ける人間とまで言われているのだ。そんな出雲は左手でいつものようにキャリーバッグを引きながら、なぜか右手には大型のアタッシュケースを握っていた。

「用件は?」

「武器の調達でございます」

「何がほしい?」

 村井の問いに対し、出雲は黙ってアタッシュケースを放り投げた。そのはずみでケースが開いて中が露わになるが、それを見て村井が初めて眉をひそめる。

「これは、これは……」

「一億ございます」

 出雲は事もなげにとんでもない金額を告げた。

「これで買えるだけ買いたいと思います」

「ここにあるもの全部を買い上げるつもりか?」

「御冗談を。もしそうならその十倍は必要でございましょう」

 出雲は笑みを崩さないまま言う。

「まぁ、いい。他ならぬあんたの頼みだ。俺がいいというまで好きなだけ持っていけ」

「恐れ入ります」

「……一つ聞きたいが、あんたがここまでするなんて、今度は誰が標的だ?」

 村井の問いに対し、出雲はさらりと答えた。

「自衛隊、でございます」

「……気の毒に」

 村井のせせら笑いに対し、出雲は無言のまま、手近な拳銃のマガジンを確認する。もちろん、村井が同情したのは出雲ではなく、その相手方である。

「それで、この国の自衛隊は、あんた相手に何やらかした?」

「……別に何も。ただの仕事でございます」

「なら、なおさら気の毒だな」

 村井はそう言って出雲を見つめる。

「本気の出雲が仕掛ける『戦争』に、平和ボケしたこの国の人間が勝てるはずがなかろうに」

「さぁて、どうでございましょうね。その理屈なら私もその平和ボケした人間でございますが……」

 そう言いつつも、出雲はショットガンに弾を込めながら、もはや凄みさえ感じさせる笑みを浮かべて普段通りの可憐な声で告げた。

「私はただ、仕事のためなら何でもする人間でございます。たとえ、相手が政府だろうが警察だろうが自衛隊だろうが、これに関して一切容赦をする気はございません。やるからには、徹底して殲滅させて頂きます」

 出雲の死刑宣告に、村井は無言で首を振るだけだった。出雲にここまでさせてしまった犯人に対し、この男には珍しく同情していたのかもしれなかった。


 翌日、六月二十三日正午。山梨県警河口署・心臓強盗事件捜査本部。復讐代行人特別捜査本部の中で唯一動く事を許されていた西沢と蓮は、しかし重い表情で捜査本部の資料を割り当てられた小会議室で調べ続けていた。

「くそっ、山梨から動きが取れないっていうのは面倒だな」

 西沢がそう吐き捨てるのも無理はない。あれから四日が経過しているが、あれ以降、出雲はもちろん心臓強盗についても、山梨県下では全くそれらしい動きがなかったのである。そうなるといくら動けるとはいえ、西沢や蓮のできる事は限られてくる。むしろ、こうして山梨に閉じ込めらていること自体が大きな足かせになりつつあった。

「東京の方はどうなんですか?」

「今朝の佐野警部との話だと、別件を捜査中の班が解決の見込みが立ったそうだ。そこが在庁勤務に戻れば、特捜の制約は外れる。ただし……早くても明日になるそうだが」

「歯がゆいですね。というより、秋口の一件以降、出雲の動向が全く入ってこないというのは少し異常じゃないですか?」

 蓮の言葉に、西沢は頷いた。

「確かにな……少なくとも山梨県下で奴が動いていたら、情報が入らないわけがないんだが……」

「かといって、奴がこの四日間全く何もしていないとは思えません」

「そこが怖いところだな……。気になるのは、矢頼千佳が帰京してしまったという事だが」

「あれを止められなかったんですか?」

「表向き、矢頼千佳は事件の後にやって来た人間だ。証拠もないし、関係ないと言われれば法律上はどうしようもない。おまけに、東京の本部が動けないから、現在の矢頼千佳の動向もわからなくなっている」

 そう言いながら、西沢も悔しそうな顔をしている。

「何だか……秋口の逮捕で事件の軸が山梨から外れてしまったような気がしてなりません。何というか、見当違いの方向を捜査させられているような……」

「君もそう思うか。確かに、秋口の逮捕は俺たちをこの山梨に釘付けにするための策の一環だったような気がしてならない。仮に立山高校の一件がなかったとしても、秋口がここで逮捕されている以上、俺たちは山梨を中心に捜査を進めただろうからな」

「その立山高校の一件……確か同時多発殺人でしたっけ。タイミングが良すぎませんか? 出雲が絡んでいる可能性は?」

 その問いに、西沢は首を振った。

「佐野警部もその件は考えたみたいだけど、今の所それはないらしい。橋本捜査一課長が直々に指揮を執って警視庁の複数の捜査班がかなり深いところまで調べているが、現時点で出雲が関与した形跡は確認できないそうだ。佐野警部はあの件は本当に別件であると判断している。ただ、そのたまたま起こった別件の事件を出雲がうまく利用した、と考える事はできるが」

「そうですか……」

「何だろう……。出雲の策略にうまく乗せられている気分だが、その策略が具体的に何なのかがわからないところが歯がゆいな」

 西沢がそう呟いた、その時だった。部屋に藤が入ってきた。

「調子はどうだ?」

「どうにもなりませんね。八方ふさがりです。捜査本部の方は?」

「同じだな。正直、下の連中は長期戦も視野に入れて捜査し始めている。もっとも、出雲が関与している以上、長期戦はあり得ないんだが……それが言えないのが歯がゆいな」

 藤も悔しそうに言う。捜査は完全に行き詰っていた。

「東京は例の立山高校の件で大変だそうだな」

「えぇ。正直、あれがどうにかならないとこっちも先に進めません」

「向こうの事件はどうなっているんだ?」

「さぁ。テレビを見たら、毎日のようにニュースをしていると思いますよ」

「なら、気分転換に見てみるか」

 藤はそう言って何気なしに備え付けのテレビの電源を入れた。何かの番組がつき、アナウンサーの声が流れる。

『……私たちは今、静岡県にある陸上自衛隊北御殿場駐屯地に特別にお邪魔しています』

 と、その流れた声にその場の三人が全員反応した。反射的に画面を見ると、そこには見覚えのある顔が映っている。

「これは……」

「矢頼千佳!」

 蓮がそう叫んで思わず立ち上がった。テレビ画面の向こう……そこでレポートをしているのは、他ならぬ日本中央テレビの矢頼千佳その人だったのである。

「東京に帰ったと思ったら、もう次の取材に出ていたのか。忙しいものだな」

 藤も驚いた風に画面を見ているが、彼女が出雲の仲間ではないかと怪しんでいる西沢と蓮からしてみればいきなり飛び込んできた重大情報だった。

「どういう事だ……何でこのタイミングで自衛隊の基地なんかを取材する……」

 西沢はそう呟きながらテレビを凝視している。どうやら何かのドキュメンタリーの取材か何かのようだったが、西沢たちからすれば何かの目的があるように思えてしまう。蓮が小さな声で西沢に尋ねる。

「これって彼女本人の意思でしょうか? それとも、出雲の指示ですか?」

「前者なら問題はないんだが、問題は後者だ。『心臓強盗』を調べているはずの出雲が、何で静岡の自衛隊の駐屯地の取材を矢頼千佳にさせようとする。そこにどんな意味が……」

 と、ここで不意に西沢は黙り込んだ。

「先輩?」

「……尼子君、今、彼女が取材しているのはどこの駐屯地だって言ってた?」

 西沢の問いに、蓮は即座に答えた。

「北御殿場駐屯地です」

「御殿場……静岡だな。確か、第一の被害者の森川景子が宿泊していたのは、山梨と静岡の県境……山中湖近くの篭坂峠にあるペンションだったはず」

「そうですけど……」

「県をまたいでいるから気付きにくいが、篭坂峠は御殿場市と隣接していたはず。今まで俺たちはすべての犯行が山梨で行われていたと思っていたし、実際、秋口は山梨側で犯行を行っていたわけだけど……犯行が二件目以降模倣である以上、別に一件目の犯行までが山梨で行われたと考える根拠はないはずだ。犯行が山梨で行われたと判断されたのは、二件目の犯行が明らかに山梨側だったからに過ぎない」

 その言葉に、漠然とその言葉を聞いていた藤が目を見張った。

「西沢君、君は一体何を……」

「藤警部、あくまで仮定ですが、この事件、一件目だけ静岡側で行われたという可能性はありますか?」

「それは……」

 その瞬間、藤の顔色が変わった。

「……ない、とは言い切れない。君の言うように、犯行が山梨側だと認識されたのは、二件目の事件を受けての事だったはずだからだ。確かに、一件目が発生した時点では、犯行が山梨と静岡のどちらで行われたのかでもめていた記憶がある」

「待ってください。もしかして……」

 蓮の表情が険しくなった。西沢が結論を告げる。

「この事件、第一の事件は静岡側……というより、御殿場市で起こっていたと考えたらどうなる? そしたら、今この時点で捜査が行き詰っている理由……何より、秋口の逮捕後に出雲の影が全く山梨県下でつかめなくなった理由、そして出雲がわざわざ秋口を解放した理由にも説明がつく」

「事件の主軸が山梨じゃなくて静岡で、出雲自身も静岡側で調査を進めているって事ですか!」

 その可能性に蓮の表情が赤くなる。藤の表情もすっかり青くなっていた。

「奴が秋口を山梨側で解放したのは、警察の捜査の目を山梨に向けさせる事で、静岡での調査を警察に邪魔されないようにするためか!」

「だとしたら、我々はまんまと奴の策謀にはまった事になります。秋口の解放からもうかなり日数が経過していますから、我々が無駄な時間を過ごしている間に、奴は相当深いところまで事件を調べ終えているはずです。はっきり言って時間がありません!」

「いや、しかし……」

 藤が何か言おうとするのを遮って、西沢はさらに深刻な表情を浮かべた。

「問題は、矢頼千佳が御殿場市にある自衛隊の駐屯地を取材しているという事です」

「どういう意味だ?」

「……藤警部、ここだけの話にしておいてほしいのですが、私たちは矢頼千佳が出雲の協力者ではないかと疑っています」

 その言葉に、藤は顔を真っ青にした。

「な、何だって……」

「もし、矢頼千佳のこの取材が出雲の指示によるものだった場合、奴は自衛隊の駐屯地に探りを入れている事になる。奴は調査において無駄な行動はしません。その奴が自衛隊の基地に探りを入れるなんて事をしている以上、恐ろしい結論が浮かび上がってくるんです」

「……まさか」

 その可能性に、藤が今度こそ絶句した。西沢は、あえてその言葉を告げる。

「この事件に、自衛隊が関与している可能性です」

 シンプルな一言だった。だが、その言葉の抱える意味は、あまりにも重すぎるものだった。

「……それが本当なら、これは大変な事になるぞ」

 しばらくして、藤がようやくそんな感想を述べる。と、蓮が弾かれたように提案した。

「静岡県警に合同捜査を提案しては?」

「いや……今の推理はあくまで俺の想像で、証拠が全くない。もちろん、時間があれば証拠を集めて県警側を説得する事は出来るかもしれないが、今回はその時間がない。はっきり言うが、ここまで事が進んでいる以上、出雲が動くまで一日ないかもしれない」

「そんなに切羽詰まっているのか」

「東京の連絡では、明日にでも立山高校の一件にけりがついて特捜が全面的に動けるようになるはず。しかし、おそらくこの情報は出雲もつかんでいるはずです。だとするなら、出雲は特捜が本格的に動き出す前に決着をつけにかかるでしょう。おそらく……動くなら今日の夜です」

「何てこった……」

 藤が呻くように言う。が、蓮はなおも諦めきれないように告げた。

「でも、特捜の名前を使えば……あっ!」

「あぁ、今我々は東京の立山高校の事件のせいで、事実上山梨県に縛り付けられている状況だ。この状況下で下手に静岡県警に協力要請をしたら、その時点で逆に俺たちも東京への帰還命令が出てしまう可能性がある。それは佐野警部も言っていた話だろう」

「じゃあ、防衛省に直接……」

「断言してもいいが、こんな戯言を証拠もなしに防衛省側が受け入れる可能性はゼロだ。それに、元々警察庁と防衛相は仲がいいとは言えない。一蹴されてお終いだろうな」

「じゃあ、私たちは何もできないって事ですか! 出雲が今夜にでも行動を起こそうとしているのに、私たちは何もできないんですか!」

 蓮の叫びに、西沢も藤も答えられない。そうしているうちに、テレビのインタビューが終了した。

『それでは、皆さん、またお会いしましょう。さようなら』

 その発言は、まるで出雲から西沢たちに対する勝利宣言のようにも聞こえた。それを聞いて、西沢は呻くように呟いた。

「完全に……やられたっ……!」

 もはやここに至っては、西沢たちにできる事は、何一つとして残っていなかったのであった……。


 そしてこの十時間後、誰も何もできないこの状況で、西沢の予測が考えられる限り最悪の形で現実に動き出す事となる……。


 時は六月二十三日午後十時。場所は静岡県御殿場市陸上自衛隊北御殿場駐屯地近くの道路。元々北御殿場基地は市街地から離れた裾野寄りの場所に設置されており、周辺に人家らしいものはない。その道路に、一台のマークⅡが静かに姿を見せていた。運転席には東、そして後部座席にはいつも通りの姿の出雲がいる。

「着いたぜ」

 東の声に、出雲は顔を上げた。周辺には林が広がっているが、その先にフェンスに囲まれた敷地が見える。

「ありがとうございます。あなたはすぐにこの場から退避してください。迎えは結構でございます」

「ようやくお役御免か。ここまで長かったな」

「頼んでおいた手筈は?」

 東の顔が真剣になる。

「予定通りだ。檸檬姉さんを通じてその筋の専門家に依頼しておいた。あんたがおっぱじめてから数分後に、あの基地の通信網は全面的に不通になり、電話線やネットワーク回線はシャットアウトされる。また、輪廻ちゃんがあらかじめ基地周辺に設置した特殊な電波ジャミング発生装置の影響で無線も使えなくなる。今から数時間の間、あの基地は陸の孤島になるって事だ。人家が周囲にないこの場所では、何をしても問題ない。それと……念のために周辺の住民にこれを配っておいた」

 東はそう言って一枚の紙を差し出した。それは何かの通知文のようで、型通りの挨拶文の後、このように書かれていた。


『……さて、この度六月二十三日深夜から六月二十四日早朝にかけて、北御殿場駐屯地を中心とした緊急の夜間訓練を実施する運びとなりました。このため、騒音等が発生する事が予想されますが、通常の訓練によるものとなりますのでご心配には及びません。近隣住民の方々にはご迷惑をおかけする事になりますが、何卒よろしくお願いいたします。なお、何かございましたら以下番号までご連絡ください。

陸上自衛隊北御殿場駐屯地司令・鶴木義輝

                        連絡先:××××-××-××××』


 紙面から目を上げると、東は肩をすくめながら説明する。

「連絡先は俺が檸檬姉さんに仲介してもらって依頼した情報操作のプロの端末番号だ。電話された場合、そいつが情報を一括操作する事になっていて、駐屯地の連中には絶対に連絡が行かないようになっている。これでどれだけ派手に暴れても、少なくとも朝までは住民連中は誰も疑問に思わないって事だ」

「ご協力感謝いたします」

 そう言う出雲の表情に変化はない。今からやろうとしている事とは裏腹に、その態度は終始落ち着いていた。

「敵もまさかあんたが自衛隊の一個連隊相手に単身『戦争』を仕掛けるとは思っていまい。逆に言えば、その油断がチャンスになるが……」

「私は戦争をしに行くわけではございません。標的はただ一人でございます」

「本物の『心臓強盗』だな。正体はわかっているのか?」

「さぁ、どうでございましょう。ご想像にお任せいたします」

 出雲は不敵に笑うと、ちらりと外を見る。

「……さて、時間でございますね」

 出雲はゆっくり車を降りた。その姿は普段と変わりはなく、先日村井から購入した武器の姿は見当たらない。漆黒のセーラー服にキャリーバッグ。身に着けているのはそれだけだ。パッと見た限りだと完全に普通の女子高生で、まさかこれから自衛隊に戦争を仕掛けに行こうとしているとは思えない。

 だが、その体から発せられている強烈な殺気は、周囲の人間を威圧するのに充分だった。慣れているはずの東でさえ、少々ひるみそうになるくらいである。

「じゃあ、幸運を祈ってるぜ」

 そう言うと、東の車は去っていった。後にはどこからか鳴り響いてくる虫の声だけが残される。

 出雲はしばらく目を閉じて精神統一をしていた。が、やがて目を開けると、駐屯地の方へといつも通りの足取りでゆっくり歩き始めたのだった。


 そして、悪夢はその幕を開ける。後に裏社会で伝説と化す『北御殿場基地事件』の『勃発』である。

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