第10話
「高村君は私を中二病とか言って、本当は魔法なんて使えないと思っているのでしょう?」
「いや、それは、えっと……」
正直、白鳥が魔法を使ったところは見たことがない。今までも中二言語には適当に合わせていた。
「使えるのよ、一つだけね。私自身と、契約を交わした下僕のみを回復することができるという魔法が」
白鳥はそう言うと、倒れている烏丸の傷口に手をかざす。白鳥の手の周りがぽかぽかと温かくなって、淡い光が生じる。
「マジかよ。お前、ヒーラーだったんか……」
「似合わないでしょう。これで黒魔導師を名乗ってた時期もあったのだから」
烏丸の血が薄れていく。
「オウル。烏丸君を安静なところに」
「あのさ、契約を交わした下僕を回復できるんだよな?」
「ええ」
「烏丸って下僕だったのか?」
「まあね。なりたそうだったし」
「確かに」
普段の烏丸の白鳥教信者ぶりを見れば明らかだった。
「ここに連れてくる時から覚悟はしてたわ。何かあってからでは遅いもの。ちなみに薫は子どもの頃から」
「おい、初耳だぞ」
勝手におれだけが特別な下僕だと勘違いしてたから、ショックと言えばショックだった。
「焼きもちでも焼いた?」
「まあ、少しは」
「ごめんなさいね。下僕は多いほどいいのよ」
「魔法、本当にあるんだな」
今更ながら実感する。
「あるわよ。私は魔法の劣等生だったけどね」
「もしかして、イギリスには本当に魔法学校的なやつがあるのか?」
「あるわよ。当たり前じゃない」
「あるの⁉ ホグワーツみたいなのあるの⁉」
「あるわよ。あの映画は上手いとこ脚色されているわね。霊が視えたり、もっと他の魔法の才能があれば、私は入学していたわよ」
「烏丸も本当に霊視えるんかな」
「彼は本当に視えてるわよ。魔法は使えないけど」
「霊だけ視えるとか、回復魔法だけ使えるとか、そんな部分的なものなんだな」
「そうよ。漫画やアニメみたいに何でも出来る万能チートキャラなんて、そうそういはしないわよ」
新年の年越しはイギリスで迎えることになった。
烏丸もヒールが早かったため、今は全回復している。
ホークは白鳥の祖母さんが尋問しているそうだ。
「ハッピーニューイヤー!」
年越しの瞬間も俺達四人は一緒に迎えた。
紅白も「ゆく年くる年」もない新年に新鮮さを感じた。
遠くで花火の音が聞こえた。
「テムズ川で上がってるのよ」
「へえ」
「これからは魔法も何でもありの闇鍋展開よ。覚悟しなさいな」
「おう。どんとこいだぜ」
白鳥さんの英国紀行 夢水 四季 @shiki-yumemizu
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