第7話

その日の夜。

「美和子に話さないといけないことがある」

 夕食の後、白鳥のお祖母さんが改まった口調で言った。

「お前の父と母の死は事故なんかじゃない」

「え……?」

 突然の告白に戸惑う白鳥。

「魔法結社が関わっている」

「ま、魔法結社?」

 そんなファンタジーな世界観だっけ。

「魔法結社同士が、たまに抗争をすることは知っているね」

「ええ」

 待ってくれ、おれは付いていけない。しかし、白鳥とお祖母さんの会話に入ってもいけないので黙っている。

「その抗争に巻き込まれて、お前の両親は命を落としたんだ」

「嘘……?」

「嘘じゃない。時が来たら話そうとは思っていた」

「お祖母さん、小6の頃、美和子が今の性格になったことと、それは関係あるんか?」

「ああ、ある。美和子も、その事件に巻き込まれていた。その時の記憶を消させてもらった」

「そうか」

「何故、今更この話かと思うだろうね。……美和子の両親を殺した組織が、また活発に動き出している」

「今回のロンドン旅行なのですが、目的はやはり、私の下僕を見せるだけではない、と?」

「そうだね。その組織は下手をすると、日本の美和子の所まで行くかもしれない。日本だと、さすがの私も手を出せない。だからホームグラウンドであるイギリスに美和子達を呼んで、そこで守りつつ、組織を壊滅させる」

 組織を壊滅とか、物騒な話になってきた。

「それで、敵というのは?」

「ホークというのさ」

 日本語訳で鷹、か。

「今度、魔法界のパーティが開かれる。そこで美和子を囮にして、ホークを叩く」

「囮? そんな危険なことを白鳥さんにはさせられません!」

 同じく黙って聞いていた烏丸が声を上げる。

「いや、これは決定事項だ。勿論、極秘裏に護衛も付ける。美和子に手出しはさせないよ」

「でも!」

「なら、お前が美和子の側に付いて守ってやればいい」

「分かりました」

「それで、薫達はどうする?」

「わいも凛と一緒に美和子を守るで」

 薫も覚悟を決めたようだ。おれだって……。

「お、おれも下僕としてご主人様を守ります」

「よく言った! 美和子を頼むよ」


 話が終わり、それぞれの部屋に戻る時。

「おい、ちょっと」

「何だい?」

「お前ら、魔法って本当に信じてるのか? 白鳥が狙われてるのとか」

「お祖母様が嘘を吐くとも思えないわ。本当でしょうね」

「いや、だから魔法とか。ハリポタじゃないんだから」

「高村君、私は最初から魔導師と名乗っているでしょう。魔法はあるのよ」

「じゃあ魔法はあるんだな?」

「ええ」

「魔法結社も?」

「ええ」

「魔導師同士の戦いも?」

「ええ」

「分かったよ。で、守るってどうやるんだ? 今からセバスチャンに護身術でも習うのか?」

「そうね、それでいいんじゃない」

「ていうか、お前、何でそんなに落ち着いてられるんだよ。自分が狙われてんだぞ」

「むしろ物語の主人公になった気分で、少しワクワクしているわ」

「中二病め。呑気な奴だな」


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