第51話 アルティメットセレブタワーへ帰還! ナイトプール気持ちええ!!


「ナゼ、僕ハ、コノヨウナ、蛮行ヲ」


 死の間際、屍田は後悔を発した。

 女神ニュルンルンが頭だけとなった屍田に応える。


「仕方が無いことなのですよ。妖精世界に侵略を果たしたのはあなたのような〈アルティメットサイコパス〉だからです。アルティメットサイコパスは妖精世界に侵攻し悪逆の限りをつくした。戦争を生み出す精神性そのものなのです。だから私は復讐で殺しに来ました。ゴキブリホイホイで殲滅するみたいにね」


「何ヲ言っていル? 世界は弱肉強食で強者生存ダ。圧倒的強者が好き放題ヲする。法を掌握すれば、殺人だって許されるだろ?」


「ハァ……」


「戦争ってのは美しいんだよ。祖国を守るために命を賭けるんだぜ? まあ俺は『死ぬ係』じゃないんだけどよぉ。戦争してえよなぁ。きっと祖国のためにっていう大義名分を掲げれば、俺のために命をかけてくれる奴がでてくるんだ。こんな最高なことはねーだろ。ァン?」


 屍田は首をかしげる。


「アレ? ナンデ俺は、本音を言ってるんだ? こんな本音をぶちまけたら、ぜっってええ白い目で見られるから言わねーのによぉ。ガキの頃いじめで自殺させたことあるけどよぉ。巧妙にやって先公を味方につけるから最高なんだよな。なーんか袋だたきにしてるみたいで最高だっっつうのによぉ。オォン?」


 女神ニュルンルンの眼が哀れみに満ちた。


「だからなんで俺は本音を……」

「女神の前ではすべての嘘が明らかになります。略奪者は嘘をつきますからね。どんな綺麗事でもその終着点が略奪なら、所詮吐く言葉は綺麗な雰囲気の嘘っぱちです。だから私は女神としてあなたが嘘をつけないようにしているのです」


 ニュルンルンは侮蔑の眼差しで屍田の頭部を見おろす。


「オ前、妖精世界ヲ侵略とかいったよなァ? 弱い妖精どもが悪いんだろうガ!」


「ふふ。そういう悪徳が元気な時代があることも認めますよ。人間は平和なだけじゃいられない。水槽の金魚が増え過ぎれば共食いをするように、惑星人口が増えれば殺し合いも始めるでしょう。ですがアルティメットサイコパスはやりすぎてしまった。私のいた『妖精世界〉はもう怒り心頭なのです。だから私はあなたたちにあえて力を与え、暴走をさせることにした。これが人類蠱毒剪定計画……」


「いい気になってんじゃねえぞメス女神ガぁ! お前がダシの主だったっつうんなら、俺が地位をゲットして犯してや……」


 屍田の頭部が塵と成って消滅していく。


「お疲れ様です。アルティメットサイコパス。あなたの心はもう人間ではなくなってしまった。だから人ではない姿がお似合いです」


「ダシで力を与えるとか言って……嘘だったのかよクソ女神ィイイイイ!!!」


「安心しなさい。私も最終的には報いを受けて死ぬでしょう。妖精世界を侵略し蹂躙したこちらの世界のアルティメットサイコパス共で蠱毒を行うのですから」


「俺は死ぬのか?」

「いま気づいたんですか?」


「だましやがったなぁ! 100回殺して……。ぁぁぁ……」

「お疲れ様でした」


 断末魔と共に屍田踏彦は粒子になって崩壊。

 100人分の命の石によって生まれた異形の三頭竜の肉体は、彼に100人分の死の痛みを与えて、砕け散っていった。





 俺は三頭竜の撃破の爆風を浴びたまま、ひうんひうんひうんと、女神ヴェーラを振り回していた。

 高速で女神を振り回し力場をつくることで、爆風から身を守っていたのだ。


「おい。クソ女神ぃ。マナは大丈夫なのか?!」

「あびゃ、びゃびゃびゃばっっっっ!」

「振り回されてて、はぁ。会話にならねえか。なら。お前を使ってやる」


 女神ヴェーラの尻が、爆風のエネルギーを吸収する。

 俺のマナはつきかけだ。だが女神ヴェーラの肉体はマナの宝庫であり、爆風なんかもマナに変換できるらしい。


 女神の尻に吸収したエネルギーを解き放つ。


「おうらぁぁあああ!」

「あばばばっばっっばっばば!」


 女神の尻から放たれた巨大なビームの反動で俺は吹き飛ばされてしまう。

 だがこれでいい。しゅうぅうんと爆風を抜けた。


 アトラクションタワー100階から飛び出す。


「どうにか爆発から逃れたが……」

「あばばっばっっっっっばばば!」


 爆風は相殺したが、ビルの100回から投げ出されてしまった。

 ヴェーラは俺に武器化され、尻からエネルギーを放出したことで、顔面が崩壊していた。めっちゃ美人なのに、顔面ってピカソみたいになるんだな。


 しかしまずいな。

 このまま俺は地面に叩きつけられて死ぬのだろうか?


「鬼神さん! こっち! 隣のタワーだよ!」


 メルルとの回線が開き、リコの声が聞こえた。

 空中に投げ出されたまま、声の方向をみる。


 なるほど。隣のタワーか。

 メルルはリコとエンジュちゃんを持って飛んでいったんだな。有能か。


「もう一度だ!」

「ふぇええええええええええ!!」


 女神の尻に蓄えたビームを放出し、反動で俺は空を飛ぶ。


 夜空に一筋の光条が走る。

 俺は隣のビル、ナイトプールのネオン煌めく〈アルティメットセレブタワー〉の屋上へと突っ込んでいく!


 屋上にはリコがいた。

 ナイトプールを目指す。俺とヴェーラはプールへと突っ込んだ。


「きゅぅ……」


 ヴェーラは気絶したようだがどうでもいい。


「鬼神さん……」

「生きてたか?」


 ナイトプールでじゃぶじゃぶしながらリコに抱きしめられる。

 プールもそうだが、抱きしめられると気持ちいいぜ。


「ありがとう! また救われたね。配信の皆も喜んでるよ! 一言、コメントしなよ」


 戦闘に夢中で配信がおろそかだったな。

 そういえば放映中でもあるんだっけな。


 主催者が魔獣化したんで、嫁を救うためにそいつをぶっ殺したなんて言ったら放送禁止だな。


 まあいい。女神の強化を受けたチート級の相手を、女神の尻を振り回し物理で吹き飛ばしただけだ。


 絶望的な状況さえも覆し、楽勝で圧倒的無双を果たした。

 俺はコメントをする。


「ダメージひとつないぜ」


『強すぎる』

『帰還おめ』

『配信きれてた。妖精が逃げたから?』

『タワーのライブ中継でみました』

『女神を持って殴るって鬼すぎる』

『鬼神様だからな』

『女神が元気そうで何よりです』

『ってかお前ら女神の存在にはつっこまないの?』

『え?! 女神も鬼神さんの武装でしょ?』


 横たわる女神ヴェーラが立体映像を展開、指先でコメントをする。


『気持ちよかったです。鬼神きゅん♡』


 ヴェーラはナイトプールに浮かびながら親指でグッジョブした。


『本人降臨』

『マゾ女神?!』

『駄肉防御ってレベルじゃねーぞ?!』

『武器じゃないんですか?』

『人権侵害!』

『女神やで』


 闘いは終わった。

 俺の心は満たされていた。


――――――――――――――――――――――――

いつもコメントありがとうございます。


続きはふたつ返事で「やるやる~となりそうだったのですが、色々あって現在続けるか悩み中です。とりまエピローグの反響見てから決めようと思います! 次回第一部エピローグです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る