第31話 彩の反抗
近藤彩は、丈晴の体の中にいる。
彼を読み取ったとき、確かに彼の中にある彩に対する温かい思いを知った。ただ同時に、それが恋愛とも少し違うことを改めて思い知らされ、残念にも思った。
いま自分は、脊谷の仲間である。彼は『七瓶』。彼の思いに共感し、彼の願いを叶えるために丈晴を裏切っていまここにいる。
でも、あれ?
それはなんでだっけ?
急激に狂う思考と、乖離する現状認識。
とにかく、丈晴を守らなきゃ。
他のみんなも助けなきゃ。
今の自分には、できることがある。感情を読み取り、そして他人を乗っ取る。脊谷教授から与えられたものではある。
けれど。
与えたことを後悔させてやる。
彩は、脊谷教授のやたら落ち着いたオーラに手を伸ばそうとした。
しかし、思い知ったのだ。
圧倒的に、違う。
これが『七瓶』。
逆流に、溺れる。そのどす黒い波は、すべてを覆い隠すほどに。彩は、意識を失った。
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