彩の想いとゼロ課の罠

第9話 彩の絶望感の独白

 近藤彩は、時折叫び出したくなるし、実際そうすることもある。


 もし、仲の良いクラスメイトを自分がナイフで刺したとして。

 そのクラスメイトが瀕死の重傷を負い、入院し生死を彷徨ったとして。


 真っ赤に染まった両手は脳裏にこびりつき、時折フラッシュバックすることに対抗などできようか。


 だから、彩は学校に行くことが出来ようわけがなかった。


 幸い両親に理解があり、学校を休むことを咎められはしなかった。部屋で本を読んだり、一応勉強したりして過ごし、たまに公園まで散歩する。


 近藤彩の毎日はたったそれだけになっていた。

 友達からSNSでメッセージが届くことはある。しかし、スマホは一切開かないようにしていたから、それに気が付きようもない。なにか操作を間違えて、自分の事件に関する記事なりを読んでしまうのが怖かったから、スマホを触ることさえ嫌だった。


 彩はふと鏡を見て、すごくやつれている自分の顔を見て、人生終わったのかもな、と絶望するのだ。

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