竜 〜Over〜 機械
秋葉原。
アニメと電化製品で形成されたこの街は、いつもより人が少なかった。
それもそのはず。
鉄の化け物が秋葉原を襲っていた。
電気街は、死体か今も逃げ惑う人が点在し、駅周辺は人が押し寄せていた事が分かるぐらいに荒れていた。
ジャンク通り
文字通り、パソコンのジャンク部品などが売られている店が集まっている通り。
「う、うわぁぁ!!」
閑静な街中に男の悲鳴が響く。
そこに、店ごと貪り尽くす鉄塊がいた。
「ザザザザザ……ジ、ジジジジ……ガガガガガガガガガ……ピーピーピー」
巨躯を揺らしながら、機械音を街中に響かせる。
鉄屑の瓦礫が集った、鈍色の塊が空を向きながら痙攣する。
『ダダダダダダダウンロードダウンロードダウンロードドドドドドドドかいかいかいかい開始開始開始開始開始』
「ひ、ひぃぃ……」
初老の男がその化け物に腰を抜かしている。
立とうにも立てず、逃げようにも足がすくんでいる。
鉄の塊が、狼狽える男の方を向く。
どこからが顔でどこが目なのかは分からないが、明らかに男の方を向いていることは分かっている。
「……肉。餌。食物」
金属音まじりに発される“声”。
「はっ?え?」
「供物、捧げよ。我、黒鉄の祭壇、電磁の聖堂、即ち、神の社、我の城」
軋みを上げながら、徐々に男の方へと近づいていく。
「かかかか完全……かいかい解除じょじょじょじょじょ———
秋葉原一帯の空に浮かぶ、鉄屑の円環。
アスファルトに張り付いていく様々なケーブル、電線、コード類。
無自覚にも【機神】は、秋葉原一帯に
ゴゥンゴゥンと、唸り声を響かせながら背中についているショベルアームを伸ばしていく。
「あっ、あっあっうわっうわぁぁぁぁ!!」
その時。
紅蓮の閃光が空から落ちて——
男を掴もうとしたショベルアームをへし折った。
「間に合った!!」
アームはそのままアスファルトの上でくの字に曲がっていた。
「やっぱり、コイツやったな」
現れたのは一人の少年。
ごく普通の少年が空から落ちてきて、なんともないまま、鉄屑の塊の化け物と対峙する。
何がなんだか分からない男は、助かったと思いながら逃げていった。
それを見送りながら、立神ケントは目の前の鉄の塊に身構える。
「これが、【機神】……」
想像していた神とは違う。
もっと醜くて、粗雑な存在がそこにいる。
身体には、テレビやラジオ、エアコン、電子レンジ、電動工具まで……
ただガラクタやスクラップが積み重なっただけではなく、それがまるで身体の一部のように動いている。
「神様って言うからどんなヤツかって思ったけど、こんなヤツらなら俺も容赦なく戦うよ」
ケントは息を大きく吐いて、身体の中のドラコと共に【機神】を睨む。
「人を襲って、街を襲う……そんなヤツが神を名乗ってるなら、ここで倒す!!」
宣言と共にケントは駆け出す。
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