第2話 コンクールへの招待

 ヴァイオリン教室に着いた二人。一緒に来たが練習は一人ずつになる。ちなみにここの教室、はれたちはヴァイオリンを習っているので『ヴァイオリン教室』と言っているが、六階建てで建物の中に教室が何室もある。

 一番上の六階が先生たちの部屋、学校でいう職員室で、一階は受付と待合室のようになっている。二階はピアノ教室。三階はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロなど弦楽器教室。四階はフルート、クラリネット、オーボエ、ホルンなど管楽器教室、五階はマリンバなど、その他の楽器となっている音楽教室だ。


 はれが先にレッスンを受ける。集中力が欠けているのか、いつもと同じ注意を受ける。それでも小さい頃から頑張ってきた彼女はかなりのレベルだった。木佐優子きさゆうこ先生という優しく綺麗な先生に小さい頃から習っていた。レッスンの終わりに優子先生からコンクール参加の話が出た。今度行われる全国コンクールの予選に出てみないかというものだった。


「野々宮さん、今度の全国コンクールの予選出てみない?」

「え、全国コンクールですか?」

「そう、昨年うちの川奈君が出たの。彼、全国大会の決選まで行ったのよ」

「すごいですね」

「いや、あなたなら決選どころか入賞狙えると思うのよ」

「そんな」

「ずっと見てる私が言うのだから」

「考えておきます」

「お母さんには言っとくわね」

頷きながら教室を出る晴。

「ありがとうございました」


 部屋を出ると栄太えいたの同級生の六年生女子が栄太と話をしていた。はれも彼女のことは知っている。学校一の美人と名高い有澤麗美ありさわれみだ。顔立ちも美しく学校一の美人と言われれば、それは納得できる。だからといって栄太と仲良さそうに話をするのは何だか腹立たしかった。

 麗美れみはフルートを小さい頃から習っていたそうだ。はれはフルートのことはよくわからなかったが、彼女がかなりすごいということはうわさに聞いていた。

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