晴ときどきそよ風 ~ そよ風は、やさしい風になる ~
KKモントレイユ
第1話 ささやかなデート
周りの子たちは中学入試だの、野球だの、サッカーだのと、それぞれに厳しいこともあるのだろうが、みんな楽しそうに話している。
そんな中で彼女が小さい頃から習っているのは、苦しさを分かち合える友達も周りにいないヴァイオリンの世界だ。
帰る準備をしていると親友の
「
「ごめん、今日も稽古なんだ」
「いいよ、いいよ。でも、
「そうだね。まあ、小さい頃からこんな感じだったから慣れちゃったけど」
少し表情を曇らせながら
「でも、あれじゃない。
「え? ああ、うん。そうだね」
微笑みながら明日香が
「好きなんでしょ」
「ち、違うわよ。何言ってんの」
にこにこしながら
「な、何よ」
赤くなる
「わかりやすい。じゃあね」
そう言って明日香は行ってしまった。
栄太も小さい頃から晴と同じ教室でヴァイオリンを学んでいる。一学年上だが栄太は小さい頃から晴のことを妹のようにかわいがってくれていた。
ヴァイオリン教室へは一度家に帰ってから行くようにしていた。学校から家まで歩いて十分くらい。家から教室まで歩いて五分くらい。小学生でも十分歩いて行ける距離だった。帰ってから教室に行っても時間はそれほどかからない。
練習は疲れるが嫌いではなかった。行けばかなり高い確率で栄太に会うことができる。ただ、毎日、毎日、練習、練習というこのルーティーンにはしんどさを感じていた。
ヴァイオリンを持って家を出る。
「
肩を叩かれて驚いた。栄太だった。驚いた顔をする彼女に、
「どうしたの? なんか足取り重くない?」
「え、そんなことないですよ」
栄太の顔を見て少し元気になれた。
「そう、じゃあ、よかった。一緒に行こう。すぐ、そこだけど」
ほんの数分一緒に歩く。ささやかなデートだと思った。この時間が
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