第4話

そろそろ6月で梅雨の季節に入りそうだった。

だけど凪咲は相変わらず教室には向かわず保健室に来ていて、佐野先生や律先輩と色々話をして楽しい学校生活を迎えていた。

「梅雨は憂鬱だなー、律先輩は?」

「僕は結構好きかな…如月さんはどうして嫌いなの?」

「髪の毛が爆発するから!僕のこのストレートな髪が…!」

「湿気でやられるのは確かにあるよね」

そんな他愛ない話をしていると佐野先生が「おい、お前ら」と声をかけてきて、2人は佐野先生の方を向いてそれぞれ返事を返した。

「この間定期テストだったろ、どうだったんだよ?」

「もしかして良い点数だったら何かくれるとか!!」

目をキラキラ輝かせながら言ってきた凪咲に佐野先生は「アホか」とツッコミを入れてきて凪咲は頬をむーっと膨らませた。

2人はカバンからそれぞれテストを取り出して、佐野先生の机の上に広げた。佐野先生はジーッと見たがだんだん嫌そうな顔になってきた。

それもそのはず、2人のテストの結果はかなり良い物だったからだ。

「お前ら、気持ち悪いくらい成績良すぎかよ…」

「サボっているしこの格好しているからその分勉強に力は入れてるよ!」

「普通に授業受けていればこれくらいは…」

2人して顔を見合わせて「ねー」と首を傾けると佐野先生はため息をついて、テストを返却した。

返却されたテストを受け取ると、佐野先生が何かを思い出したかのように声を上げて何かを渡してきた。

それは…カフェの割引券だった。

「佐野先生、これって恋人さんと行ったやつ!?」

「あー、そうそう。そこで貰ったやつ。まぁ、テスト頑張ったご褒美にやるよ、2人で行ってこい」

「やったー!」と喜ぶ凪咲だったがピタリと止まった。まさかの律との2人っきりで出かけるからだ。

大丈夫か…と思い、律の方を見るとニコニコ笑っていた。

「楽しみだね、如月さん」

「…え、あ、うん!楽しみ!!」

凪咲と律は話し合いをして次の日曜日の日に行く事に決定したのであった。


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そして当日。

凪咲は可愛らしいワンピースに身を包み、いつもは結んでいなくストレートな髪の先を巻いて巻き髪にしハーフツインアップにしていた。

家族からは「デート!?」と突っつかれたが凪咲は答えることはせずに逃げる様に家を出て待ち合わせ場所に向かった。

駅前に着くと壁に寄り掛かり待っている律を見かけ、周りには声を掛けたそうにしている女の子達がいた。

(ちょっと勘違いされるだろうけど、まぁ知らない人達だしいいや!)

「律先輩!お待たせー!」

「あ、如月さん。大丈夫だよ、僕も来たばっかだから」

「またまたー!そう言って何分前から待っていたんでしょ?」

ニヤニヤと楽しげに笑いながら問いかける凪咲に律も楽しそうに笑い、そのまま割引券を貰ったカフェへ向かうのであった。


カフェに着くと律と凪咲は席を案内されて、ソファー側に凪咲はエスコートされた。

周りを見るとカップルか女性同士しか居なく、凪咲はチラリと律を見た。

(律先輩って周りからの目とか気にしないのかな…)

「如月さん」

「うぇっ!?は、はい!」

いきなり目が合い声を掛けられた為、凪咲は変な声を上げてしまい顔を真っ赤にして照れてしまった。

「メニューどうする?昼飯は何か食べた?」

「うーん、少し食べちゃったからパンケーキにしようかな…律先輩は?」

「僕はパスタとかにしようかな、頼んじゃうね」

メニューを持つと店員さんを呼びスムーズに注文していく律をボーッと眺める凪咲。

注文が終わるとまた目が合ってしまい、相手がニコッと笑って口を開いた。

「あまり顔を見られると照れてしまうよ」

「いや、だって先輩の顔かっこいいし、返答とかエスコートとか凄い慣れてるから…彼女さんとか居るのかなーって」

「彼女?居ないよ、居たら如月さんとデートしないしね」

誠実さのアピールもしてきて凪咲は「ふーん…」と言ってお冷を飲むと、少し体を前に出す様にして律に問いかけた。

「何で彼女作らないの?律先輩ならめちゃくちゃモテそうだし」

「………別に興味無いかな…」

「恋愛に?」

「………」

そこで黙られてしまって凪咲は問いかけようとしたが、頼んでいたドリンクが来てしまいその後は聞けずじまいになってしまった。


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「ちょっと、払わせてよ!」

「先輩だからここは奢りという事で」

カフェを楽しんで会計を済ませようとしたら律が先に全額払ってしまい、凪咲は自分の分を出そうとしたが相手は受け取ってくれなかった。

「先輩は僕の恋人じゃないじゃん!」

「後輩に奢っただけだよ」

何を言ってものらりくらりと躱されてしまい、凪咲がどうにかして受け取って貰おうとした瞬間だった。

「あれ?七条じゃん」

後ろから男の声が聞こえて振り返ると凪咲が知らない男子2人が手を挙げながら近づいてきた。

凪咲が不機嫌な表情で律に隠れるようにしたが、すぐに男子が「あっ!」と声を上げた。

「キミって1年の例の子じゃん!」

「ああ、男なのに女の子の格好してる子な!」

好奇な目と口振りに凪咲はムッと怒りが来たが我慢をすると、律が隠すように前に出て2人に声をかけた。

「何か用かな?」

「いや、用はねぇけどよ…もしかして七条って可愛ければ男でもOKな人?」

「いやー、可愛くても男はキツイだろー!」

その言葉に律の体がピクリと反応した事に凪咲は気づき、我慢出来なくなった凪咲はいつの間にか律の前に出ていた。

「あの!僕と律先輩はただの友達です、友達同士が遊ぶのは普通ですよね?それとも友達同士で遊んでいる事が同性愛だと言いたいなら先輩方もそういう事になりますが?」

「はぁ?んだと、テメェ!生意気な!」

「勘違いしたのはそっちでしょう!僕と律先輩は不快な気分になりましたよ、謝ってください!」

ビシッとそう言うと2人は謝罪をしてから去っていってしまった。

凪咲がクルリと振り返り律を見ると何処か嬉しそうで辛そうな表情をしていて、声を掛けようとしたがその前に声を掛けられてしまった。

「ごめんね、変な事に巻き込んで」

「いえ、寧ろ僕なんかと遊んでいたから…先輩があんな風に言われて…」

「僕は気にしていないよ」


その時だった。

風で律の髪が揺れて凪咲は見てしまった。

右耳にあるピアスを……

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