第4話 「真実」はチェコ人にとっては大切な言葉です

 カトリックはボヘミア王ヴァーツラフ4世にフス派の鎮圧を求めた。ジキスムンド様は前々から望んでいたことだった。なぜなら、ボヘミア王に子どもはいないため、次のボヘミア王はジキスムンド様だと決まっているからだ。ヴァーツラフ4世は王としての威厳はないため、今のプラハは荒れている。その上フス派もいる。そんなボヘミアを正しくするいい機会だ。


 ヤン・フスがプラハでの説教を禁止されてしまった。今まではボヘミア王がフスを庇っていた。しかし庇いきれなくなったのか、はたまた自分が異端と言われるのが怖かったのか、フスをプラハから追放された。国王は今もカトリック側との和解を求めているが、そんなこと実現するわけがない。

「おい、大変だ!」

「どうした、オブ?」

「フス先生が、コンスタンツに行くって。」

「おい、嘘だろ?」

「いや、本当だ。」

コンスタンツ会議。今分裂しているカトリックの和解のための会議。噂ではフスも呼ばれるかもしれないと流れていたが、会議に行くということは死ににいくようなものだ。

「おい、あれ。ボジボイじゃね?」

「あ、本当だ。」

ボジボイは俺らの友達でフス派。軍人の息子で俺の鍛冶屋を贔屓してくれる、親の繋がりもある人だ。

「ボジボイは誰といるんだ?おっさん?」

「少し話しかけてみよう。」

俺らはボジボイの元へ向かった。

「あ、オブ、ヨゼフ。どうしたんだ。」

「ボジボイ。その人はだれだ?」

よく見るとそのおっさんは眼帯をしていた。

「おい、二人共。この方はボヘミア国王軍事顧問のヤン・ジシュカ様だ!」

「「えっ―!?」」

ヤン・ジシュカといえば、超有名な軍人。しかも俺らフス派の仲間らしい。

「ああ、俺はジシュカだ。確かお主はペス商人のとこの、お主はあの質のいい剣の鍛冶屋のとこの倅だな。」

「俺らのこと、知っているのですか!?」

「ああ。すごく若くて、フスの考えに熱心な同志がいると有名だな。」

「そうなんですか。」

「ああ。」

「ジシュカ様なら、コンスタンツ会議のこと、聞きましたよね?」

「もちろん。フス自身の考えも聞いた。」

「フス先生はなんて?」

「『真実を伝えに行く』っだてよ。」

「・・・。でもそれってフス先生、死ぬかもしれませんよね?」

「俺も言ったさ。けどな、あの方は真実のためなら命をかける人さ。」

 

 俺らはフスのことを気にしながら生活していた。しかしその後、7月、フスは火刑に処された。それはチェコだけでなくヨーロッパの混乱の火種になった。


【第1章 ヤン・フス編 終 第2章 破壊の始まりに続く】


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