304. 帰ろう
終わった。魔王戦、長かったぁ。
その後なんやかんや事後処理もやって、今夜は宴を開くらしい。ってことは帰りは明日かな? ムニ料理楽しみ~。
周辺被害者には私が作ったポーションをムニ国民たちが配るらしい。それで私たちの役目は終わりだ。私たちは遠い北の国からやってきた言わば部外者だからね。あんまり首を突っ込まない方が良いと私も思うよ。復旧は自分たちで頑張ってね。
勇者くんと銀髪ちゃんが話し込んでいる。私は鳥籠メイドさんが持つ鳥籠の中だ。お酒マンもいる。そう言えば転移の魔道具が3つあったんだっけ。それで3人はこっちに来たのか。
ぼうっと見てると、勇者くんからカティヌールの王様がどうとか助言を求められた。
カティヌールってあれでしょ? 南にある国で、大軍で山越えて攻めてきた国だ。しかも魔王配下を呼び出したりと無茶苦茶した股間の魔術師を連れてきた迷惑国だったよね。
だけどまぁ、結局戦うことなく和平を結んだらしい。つまり終わった話だ。それをなぜ今更私に訊くんだろ。
「カティヌール王、仲良し!」
相変わらず私の語彙が乏しい。けどこれで問題ないのだ。なぜなら聖女さんの妹さん問題もこれで解決したんだから。
まわりがザワッとする。
国家間の問題だから無条件でそんなに簡単に仲良くできないのかもしれない。でも戦争は回避したいよね。じゃぁ期間限定で様子を見たらどうだろうか?
「仲良し、1年! 様子見!」
1年様子見して問題なさそうなら友好続行、駄目ならまた話し合えば良いじゃない。
そんなことを話していると、今度はムニムニたちが騒ぎ始めた。魔王に植えた木がなんかウゾウゾうごめいている。キモ。
ってか、なんで魔王に木を突き刺したらそれで封印完了って話なんだろう? いまだにわからん。まぁ実際に封印できたからいいのか。
見てるとポテッと出てきた私人形が勇者くんに嚙みついた。勇者くんが手を振って私人形をふっとばす。
あれ? あの人形ってもっとボロボロじゃなかったっけ? よく見ると取れて無くなってた左腕も木製になって直ってる。
「ちくしょう! 何が可愛く生まれ変わるや! 人形やんけ! あ、待って! マシンガントークやめて! カワイイデス! ソウデスネ!」
え。関西弁って、もしかしてコイツ魔王?
うわー、また面倒くさくなったじゃないの。知らんぷりしとこ。そう思って静観していたら、どうやらこの私人形あらため魔王人形をお城に持って帰るという流れに……。
ダメ、それは断固反対です。お城のラブリーファンシーペット枠は私1人で十分なのです。新しいのが来たら皆新しい方を可愛がるのがペット界の常識。ここは何かそれらしいことを言って
「あ、妖精! おまえそんなとこに
無視無視。
「封印、なされたが、罪、消えない」
「妖精様?」
「なんや? 何言うてんねん!?」
ふ、魔王に現地語は分かるまい。
この森は魔王戦で怪獣大戦争みたいになったから燃えてボロボロだ。私なら簡単に復活させられるし、後で復活させとこうと思ってたけど、それはやめだ。
「罪を償うため、森、再生させる。それが義務。そなた……」
えーと、何て呼べば良いんだろ?
魔王とかガルムって見た目じゃないよね。私2号……。ちがうな。こんなのが私の2号なんて
名前……。面倒だな、
「名付け、ポチ。森が再生するまで、この地で森を守れ」
よっし決まった。これで
「なんや、名前の縛り!? 何て言うたんや!? おまえ! また俺を名前で縛りやがって!」
魔王が無表情でさわぎ始めた。人形だから表情変わらないのか、こわ。
まぁ、何もわからないのは可哀そうだし内容だけでも伝えといてあげるかー。しょうがないなー。
「えーと、アンタの新しい名前はポチ! 森の木がまた生えるまでここで番犬ね! それ以外は自由に楽しくやってれば良いよ。悪いことしたらダメだけどね。あ、それから一人称俺禁止。女の子っぽくして」
「誰がポチや! 嫌や! あ、待って待って待って……、ちょっとストップ、マシンガントークストップ! うるさい! 木がうるさい! イエ、ウルサクナイデス! カワイイデス! ワタシハポチデス! 森マモル! ワタシモリマモル! ポチデス!」
ポチが突然苦しみ始めた。
木がうるさいってなんだ? 木は喋らないでしょ。新しい体に慣れてなくてつらいのかな? まぁいいや。
「森が再生したらたまには遊びにきてもいいよ。数日で帰ってくれるならね」
「誰がおまえんとこなんか行くかボケ! イエ、イカサセテモライマス! ワタシ、タノシミデス!」
じゃぁ、ちゃちゃっとドラゴン直して帰ろうか。宴やって明日帰宅とか思ってたけど、とっとと帰ってしまおう。そうしないと
ドラゴンの胸の玉を修復して帰宅メンバーをドラゴンに乗せていく。
うーん、定員が心配だな。えーと、ムニ姫様とムニ2人は置いていけば良いか。せっかく母国に帰ってるんだから、皆と一緒にお城まで戻るとまたこっちに帰ってくるの大変だよね?
「ここ、残る?」
そう訊いてみると、ムニ姫様は目を大きく見開いた。
うん? やっぱり置いてかれたくはなかったのかな? そう思ってると、ムニ姫様は嬉しそうに満面の笑みでゆっくり頷いた。
「国家間のしがらみで
……なに言ってるの?
まぁいいや。森が禿ちゃってるから食べ物とか大変かもしれない。植物を育てやすくなる魔道具を作ってあげよう。ほいっとな。もう会うこともないだろうけどお幸せにね。
じゃぁバイバイ! やっと帰れる。
……あれ?
私はドラゴンの上のメンバーを見渡した。勇者くん、聖女さん、銀髪ちゃん、鳥籠メイドさん、おじゃーさん、お酒マン……。全員いるよね?
……気のせいか。
じゃぁ、しゅっぱーつ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます