小さな妖精に転生しました

266. アトラクションショー

　ムニムニに襲われた後、私たち一行は進路を変更した。たぶんだけど王都に帰るんだと思う。王族が襲われたんだし、まぁ当然なのかな。

　んで、急いでるっぽいからすぐに帰れるようにスピードアップしてあげたんだ。

　この速度で走ると相変わらず揺れがすごい。鳥籠を少し浮かせてるから私は揺れないんだけど、鳥籠上部のフック部分がカチャカチャ鳴るのが少しうっとおしいかも。でも仕方ない。鳥籠を何処にも触れさせないようにしてしまうと鳥籠ごと馬車に置いてかれるもんね。

　そんなこんなで翌朝、私はニーシェさんの大声で目が覚めた。どうやらいつの間にか寝てたっぽい。まだ朝日が出たばかりみたいだし、普段起きる時間からはだいぶ早いけど……。目が覚めちゃったならしょうがないね、起きるか。

　顔を上げると銀髪ちゃんとニーシェさんが外を見てるので、なんとなく私も窓の外を見上げたら2つの月が両方とも満月なのが見えた。

　あー、ってことはアレか。河が逆流する時期だ、たぶん。ガキンチョたち大丈夫かな。また流されたりしないかな。

　去年3兄弟の兄くんが河に流されたとき、めちゃくちゃ怒られてたから今年は河に近づいてないと思うんだけど……。でも私は知ってるよ。あの後もガキンチョたちがあの排水口みたいなとこを秘密基地にしてたのを。

　うーん、念のため確認に行こうかな。でも勝手に馬車から離れるとまた鐘をガランガラン鳴らされるかもしれない。一応許可を取ってみるか。河の方を指差して向こうに行っても良いかアピールしてみる。

　するとなぜか銀髪ちゃんがハッとしたような顔をして、馬車ごと私が指さしてる方へ向かいだした。むむ？　みんなでガキンチョの様子を見にいくの？　そんなワケないよね？

　鳥籠メイドさんが地図を出しての合図をしてくる。指で四角をつくるあのジェスチャーだ。

　地図を出してみると、なんか私たち一行の後ろから赤点が数個追いかけてきてるのが表示された。それを見た鳥籠メイドさんが馬車を止めてドアを開け、突然極太ビームを撃った！　相変わらず突然だって！　びっくりだよホント！

　ドラゴンの上から撃った魔法ほどは大きくないけど、南に行ったとき冒険者を即死させてたくらいの威力はあるし。

　よく見るとなんか大きな板を攻撃してるっぽい。草むらの中に不自然に板が突き出てるね。ってかアレ、なんか見覚えあるぞ……。あ、ムニムニが持ってた盾か。タワーシールドってヤツだよね？

　なるほど、昨日襲ってきたムニムニが追いついてきたってことか。ホントしつこいな。私の作った試作特産品持ってったんだから、それをお土産にしてもう家に帰ってよ。

　そう言えば昨日、ムニムニはドラゴンドラゴン叫んでたなぁ。そんなに好きならドラゴンに会わせてあげよっか。ドラゴンに襲われたらさすがに逃げ帰るでしょ。

　ってなワケで、ドラゴンを取ってくるため私だけ1度お城に飛んで戻る。街を見下ろすと、なんかいつもより人がいっぱいいる気がするね。河沿いに人だかりができてる。もしかして河の逆流を見にきた観光客？　最前列は警備っぽい人たちだけど、後方はどう見ても観光客だ。橋の上なんて観客席と言っても過言じゃない状態だって。

　っと、今はそれどころじゃなかった。

　お城からドラゴンを発進させて、しばらくムニムニたちと戯れさせてみる。だけど全然逃げる様子がない。だからもう、なんか色々面倒になってムニムニたちを河に放り込んだ。3人ほど逃げられたけど、お酒マンが岩を飛ばして河に落としてくれた。

　普通の人が河に流されたら死ぬかもしれないけど、鳥籠メイドさんの極太ビームくらっても元気ピンピンだったしムニムニなら平気でしょ。だけど、一応回収しとくか。死なれても寝覚め悪いし、生き残られてもまた襲われそうだもんね。

　地図を出して赤点を探してる間、観光客がワーワー騒いでる。間近にドラゴンが来て暴れてたんだからそりゃパニックにもなるか、と思ったんだけどどうも喜んでるっぽい。もしかしてアトラクションショーかなにかだと思われてた？

　それならそれで、アトラクションっぽく光りでも振りまいとくか。ほーら、キラキラだよー。おお、喜んどる喜んどる。私の光はなんか健康に良いらしいからね。言わばサプリの雨みたいなもんだ。ほーら、たんと浴びろー！

　って、ちがうちがう。そんなことしてる場合じゃない。ムニムニを回収しないと。

　その後、私はなんとかムニムニたちを全員回収した。

　……全部で7人だったよね？