262. 残念だったね!

 ――キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンッ!


 わー、はやーい! 見えなーい!


 キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンッ!


 剣の音がいっぱいするー!


「ムニムニ!」

「ムニッ!」

「ムニムニムニ!」


 ムニムニ音もするー!



 なんかドワーフみたいな茶色い小さなオッサンの集団が襲ってきて、でもまぁ、今までも魔物の襲撃とかはあったけど問題なく撃退してたから今回も心配ないのかと思ってたんだよね。


 だけど今回は小さいオッサンが強すぎた。一瞬で騎士の人が真っ二つにされるなんて思わないじゃん。なんであんなバカでかい武器持っててそんな速く動けるのさ?


 慌てて回復魔法と補助魔法をかけたんだけど、それでも小さいオッサンを撃退することができていない。野盗が相手のときは補助魔法をかけたら一瞬でケリが付いたってのに。


 小さいオッサンたちはドラゴンとか妖精とかムニムニとか言って縦横無尽に暴れまくっている。

 唯一互角に戦えてるのがお酒マンっぽい。

 なぜ「ぽい」って表現になるのかって言ったらそりゃ、見えないからだよ。速すぎて。私の視力はかなり良いんだけど、それは遠くがよく見えるだけで動体視力はそこまでよくないのだ。


姿は見えないのに残像は見えるし音もキンキン凄い。お酒マンてあんなに強かったのか。しかもなんかときどき石飛ばしてんだけど。あの石どっから出てきてんの? あれも魔法攻撃? めちゃつよじゃん。


 だけどやっぱりヤバい気がする。お酒マン以外が全然相手になってないじゃん。斬られては私の回復魔法で復活してを繰り返して肉壁になってるだけだ。だから私は回復魔法に専念しなきゃならなくて他の行動がとれない。だってバッサリ体が真っ二つとかドでかハンマーで体がぺっちゃんことかなんだよ? 一瞬でも回復魔法が遅れたら即死コース、気が抜けない。

 鳥籠メイドさんとニーシェさんも魔法を撃つ準備はしてるものの、相手が速すぎて攻撃できないでいるっぽい。


 そうこうしてると、ムニムニが1人馬車に向かってきた。やっぱこっちを狙ってくるのか。ドでかハンマーを振りかぶり馬車に向かって跳躍ぶハンマームニ。それを咄嗟に馬車のドアを開けてニーシェさんが魔法攻撃で迎え撃つ。


 ダメだー! 全然魔法が効いてない!

 そんなハンマーでぶっ叩かれたら馬車が吹っ飛ぶって! うわー! もうおしまいだーッ!

 ……あれ?


 もうダメかと思ったけど、なんか銀髪ちゃんを中心に突然バリアーが出てハンマー攻撃を防いだ。さすが王族、もしものときの守りも完璧じゃん!

 でも直接ダメージは入らなかったけど、衝撃が馬車を突き抜けてって、その衝撃で反対側のドアが吹っ飛んで馬車の中のモノが外に散らばった。


 あー! せっかく私が筋肉マッスルブルクのために作った試作特産品がー! 考えといてって言われたから律儀に試作してたのにー! あと私のボードゲームも散らばっちゃったじゃん。


 まぁ、べつに試作品はいらんけど。ハッキリ言ってゴミだし。それにボードゲームは後で回収すれば良い。人命が最優先だ。

 とか思ってたらムニムニたちが散らばった私の荷物に群がってきた。うわぁ、色が茶色っぽくて動きが速いからゴキブリっぽい! 妖精になったからか虫とか大丈夫なんだけど、この動きはなぜか生理的嫌悪がわくって。効果音を文字で表現するならカサカサだ。

 散らばった荷物をカサカサと回収したムニゴキたちはそのままカサカサと去っていった。


 ホントなんだったんだ……。

 金銭目的の凄腕盗賊団か何かだったのかな。それで、王族の荷物をゲットして大金ゲットだぜとか思ったのかもしれない。でも残念、持ってかれた荷物の大半は私が作ったゴミなんだ……。


 残念だったね!


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