248. スーパービューティフルパーフェクトな妙案
はい、何でもお見通しの叡智の妖精様だよ。
まぁ、そんなことは全くないんだけど……、今さら違うとも言えない雰囲気なんで私は賢いキャラを貫き通しているんだ。
去年の私は預言者かと思うほど、未来に起こる問題の解決策を事前に用意しまくってたらしい。けどそれ全部ただの偶然なんだよね。
でもみんな全て私の想定通りって思ってるワケで、下手に行動すると何でもかんでも未来にそんな問題が!?と思われる始末なんだ。ホント、動きにくいったらありゃしない。
そんな状態で何が1番問題かって、私が言葉を覚えちゃったことなんだよね。前までは何を言われてもわからなかったから自然体でいられたんだ。そもそも私が最近まで喋らなかったから、何かを訊かれたりとかはほとんどしなかったんだよ。だけど今は事あるごとに質問されちゃうんだよねぇ。
何を言っているかはだいたいわかるようになったけど、その質問の答えなんてわかるワケない。国の偉い人がわからない問題を私がわかるワケないんだってば。
だけど私は叡智の妖精様、わからないは許されない。間違うことさえ許されない。なので私は考えたのさ。はぐらかせば良いんだって。
だいたいの質問は「人の力で解決すべき」「今はまだ知る必要は無い」の回答で解決する。まさに魔法の言葉だ。なんでもかんでも神頼みは人類の成長を妨げるからね、自分たちで解決してね!
金髪兄さんにあげたマントも結婚式で出したでっかい神様モドキも光の玉も、まだ人類が知るには早いんだよ。100年ぐらい待ってね、その頃私は死んでると思うけど。
もう1つの対策として、喋れるようにはなったけどとりあえず無口キャラを継続してる。無口キャラには質問しづらいかなって思って。だけどそれだけじゃ解決しない問題が3つほど残ってるんだー。
1つは、私が巡回派遣とやらに出発しなきゃならないらしいこと。
巡回派遣ってのは、どうやらこの国の各地を巡回することらしい。どうも私は周囲の作物の成長を促進する力があるらしくて、それで各地を回って国内全部豊作にしちゃおう作戦なのだ。
なんか知らないけど、どうも去年に私が巡回派遣を了承しちゃってたらしいんだよね。いったいいつ了承してたのか見当もつかないけど、去年は不用意に頷きまくってたからなぁ。
でも今後同じ失敗はしないよ。なぜなら言葉がわかるようになったからね。言ってることがわかればとりあえず頷くなんてことしないって。
それに巡回派遣とやらも行けば良いだけだし。それで終わる。って言うか、ぶっちゃけ予算国持ちの国内旅行だよ。うっはうはだね!
去年に北へ正式訪問して、西は私1人で国境超えまでした。南は途中まで馬車で行ったから、今年は東に行くらしい。
それは問題ない。それは問題ないんだけど、問題はそれに勇者くんが同行する予定ってことだ。そしてこの問題が残り2つの問題にもかかってくる。
問題の2つ目、勇者問題。ぶっちゃけこれが1番やっかいだ。
私が勇者くんを勇者と呼んだことで勇者くんは国から正式に勇者認定されてるらしい。それで勇者がいるんだから魔王もいるのかという疑念がわいてきたんだって。知らんがな。
救国の存在で叡智の妖精様とまで呼ばれている人外存在が勇者だって言うのだから間違いないだろうと判断されるのは理解できないこともない。その思考ロジックは理解できるんだけど、その盲信具合はちょっと理解できないかなぁ。
だって私が勇者くんを勇者と声に出して言ったことなんて、確かドラゴン討伐後の1回だけだよ? その1回を忘れずにず~っと勇者とは何か、何のために勇者が出てきたのか、とかみんなで考えてたって聞いたらそりゃドン引きだって。
安心して、魔王なんていないから。
って言えれば良かったんだけど、もうそんな雰囲気じゃないんだよね。戦争から帰ってきた人員を今度は魔王調査とかに割いてるっぽいし。事務処理の人たちも古い文献から参考になる記述が無いかとか調べてるらしい。
そして3つ目の問題。件の勇者くんは、どうも私が未来予知なんてできないと思ってるっぽいのだ。それどころか私がバカなんじゃないかと疑ってるっぽい。救国の妖精様相手になんたる不敬。
でも未来予知なんてできないのは事実だから下手に近づきたくないんだよね。私が賢いのは間違いないのに、未来予知できないという1つのウソから賢いのもウソだと思われそうなんだもん。
勇者くんの主張が一部正しいと証明されてしまったら、その主張は全部正しいと思う人も出てくる可能性が高い。つまり私がバカだと思われちゃうのだ。それはイヤだ。それだけは避けたい。
でも大丈夫、賢い私は全ての問題をまるっといっぺんに解決できるスーパービューティフルパーフェクトな妙案を思いついてしまったからね。
私の東行きに勇者くん同行させたくないのなら、勇者くんを別行動させてしまえば良いのだ。魔王対策っぽい雰囲気を醸し出しておけば断れないし、勇者発言や魔王問題も一気に解決する。私が東へ行くから勇者くんは西へ。
なにも魔王がホントに出てくる必要なんてない。「勇者のおかげで魔王復活は阻止できたのだ!」とか言っておけばそれでオーケー。もしまかり間違って魔王が出てきたとしてもそれはそれで「ほらね、だから勇者必要だったでしょ?」って言えば私の株がまた上がる二段構えよ。ふふふ、我ながら自分の賢さが恐ろしいわ。
ってことで、謁見を開いて適当に勇者くんに西行きを命じておいた。
でも私も鬼じゃないからね、旅の資金も渡したよ?
実は私はお金持ちだったのだ。なんかおじリーダーが定期的に持ってくるお金が実は全部私のモノだったらしいんだよね。その一部から勇者くんの旅の初期費用として渡しておいたんだ。この国のお金の価値はよくわからないけど、金貨がいっぱい入ってる箱を1箱まるまる渡したから十分過ぎるでしょ。
それからヒノキの棒っぽい武器も渡しておいた。
勇者の旅立ちと言えばやっぱりヒノキの棒でしょ。なんでそう思ったのか私自身もよくわからないけど、勇者の旅立ちと言えばヒノキの棒なんだ。そうささやくのだ、私の
あいにくどの木がヒノキなのかとか、そもそもヒノキがこの世界に生えてるのかなんてわからなかったから去年生やした果樹の枝から適当に作った棒を渡しておいた。
「装備しないと持ってるだけじゃ意味ないよ」って伝えたかったけど、装備って単語が分からなかったから「持ってるだけじゃ意味ないよ」ってところしか伝えられなかったけど、まぁ問題ない。
だってぶっちゃけ、ただのお遊びだし。
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