222. 精霊の守り
「クルスリーデ様、ですから本日聖女様はお忙しく……、先々代聖女のあなたと言えどお会いする時間などないと言っておりますでしょう。また明日おこしください」
「結界維持作業もない聖女の何がそんなに忙しいと言うのですか。どきなさい」
また妨害が入りましたね。
今朝から教会の者の態度が明らかにおかしい。当初は気のせいかとも思いましたが、私の行動を誘導して
あの子は何か良くないことを考えているに違いありません。今日だけ私を遠ざけようとしているというのなら、敢えて会ってみようではありませんか。
それに、ちょうど相談したいこともあるのです。
光の玉が失われた今、聖女の力では国を守ることなんて到底できません。聖王国内の人間は未だに自国の力だけでなんとかしようとしているようですが、2国から同時に侵攻されようとしている今、聖王国のみの力だけでは最早どうすることもできないでしょう。こうなっては他国に助力を求める他ありません。
しかし、私には外との伝手がない。何せ生涯1歩も国から出たことなどないのですから。唯一、エフィリスが行ったファルシアン王国なら国力もあり、未来の王太子妃の親という繋がりもあるのですが……、遠すぎます。
それでもマリーなら帝国との繋がりがあります。帝国皇子と婚約解消したため大きな助力は得られないかもしれませんが、何もないよりはよほど良いでしょう。
「マリー。良かった、ようやく見つけましたよ」
数えることも馬鹿らしい程の妨害を受け、それでも何とか昼過ぎに数人の供を付けて教会に向かうマリーを見つけることができました。
「どうして!? どうしてお母様がここに!?」
激しく動揺するマリー、やはり今日は私に会いたくなかったようですね。
「マリー、あれから私も色々と考えました。先日はもうお終いだなんて言ってしまいましたが……、光の玉を失ったことで私も動揺していたようです。良からぬ考えは捨ててもう1度今後について話し合いましょう」
「良からぬ考え? 失礼ですね、何を言っていますの?
動揺から立ち直ったように見えますが、視線の揺れや手の震えは隠せていませんよ。
「やはり何か企んでいるようですね」
「はぁ? アンタに
私にそのような能力はありません。古い時代の聖女には様々な異能があったそうですが、代を重ねるごとにその様な特殊な能力は徐々に失われていきました。私の代の以前から既に、聖女の力は結界維持しか残っていないのです。
「聖女の能力ではありません。それくらい分かりますよ、母親なのですから」
「母親!? アンタが
「マリー……」
確かに今まで娘達との時間はほとんど取ってきませんでした。私自身も親と過ごした記憶はほとんどありませんがそこに何の疑問もなかったため、娘達もそうだろうと勝手に決めつけていたようです。まさかマリーがこんな思いを抱いていただなんて……、もっと早くに話をするべきでしたね。
――ガタッ
「おらぁッ!」
――キンッ
え? 突然物陰から大柄な男が私に襲い掛かってきました。
「何者だ!?」
「聖女様、危険です! こちらへ!」
「ちょ!? なんでこのタイミングなのよ! 私が居ないときに襲いなさいよね!」
マリーの付き人が前に出てマリーを守ります。しかしどうやら狙われているのは私だけの様ですね。それにしても……?
「ふんッ! ふんぬッ!」
――キンッ キンッ!
男が私に剣を振るう度に何かに妨害されているようです。不自然に剣の軌道が変わる度に、何かに当たったかのように金属音が鳴り響きます。
「ちょっと! なによそれ!? 結界じゃないわよね!? アンタが光の玉なしの通常結界が苦手だってことも、こっちは知ってるのよ!」
「ふんぬぅ!」
――キンッ!
「……魔力は感じないわ。まるで何かに守られているよう……。まさか、精霊に守られてるとでも言うの!?」
そんなまさか。精霊様は居ない、それが聖女の常識だというのに……?
「なによ! 精霊なんて居ないと言っておきながらアンタ自身は精霊に守られてるだなんて! どいつもこいつも私を馬鹿にして! 早くそいつを殺しなさい! 殺せ!」
「うおりゃぁッ!!」
――キンッ ドカッ!
「ぐへッ!?」
「うお!?」
「うわ!」
「きゃぁ!?」
男の渾身の一撃は再度何かに阻まれ、それだけにとどまらず何故か男は反撃されたかのようにマリーの方へ吹き飛ばされていきました。いったい何がどうなっているのでしょう?
本当に……、これは精霊様のお力なのでしょうか?
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