221. 洗脳
まさかこんなに早く周辺国が攻めてくるなんて思わなかったわ。攻めてくるのは春のガルム期だって思っていたのに、まさか年末に兵を集結させてくるだなんて……。
「へぇ、なんだか胡散臭ぇ仕事だって思ってたが、えらい
教会内にむさ苦しい男の声が響く。これが冒険者ね、汚らわしい男達だこと。こんな状況じゃなきゃ視界にも入れたくないわ。だけど今は手駒を揃えないと。
「お前、聖女様に失礼ではないか!」
「
「まずはお茶でもどうぞ。お口に合うと宜しいのですが」
「おぅ、なんか高級そうな茶だぜ。これが聖王国の茶かぁ!」
「ははは、これだけでもここに来た甲斐がありましたね」
「……」
ガサツそうな大柄な男と、神経質そうな男、それから無口で不愛想な何考えてるか分からない男の3人ね。どいつも胡散臭そうだわ。
大柄な男と神経質そうな男がすぐに茶に口を付ける。でも、もう1人の無口な男がなかなか飲もうとしない。チッ、トロ臭いわね。早く飲みなさいよ。
「ささ、アナタもどうぞ」
「……ああ」
ニコリと微笑んで勧めると、無口な男がようやくお茶に口を付けた。ふふ、飲んだわね。これが聖王国のお茶? 何をバカなことを。これは帝国が開発した魔術大国エネルギアの洗脳魔術をより強化するお茶よ。さ、仕上げましょうか。
「では、依頼の話をさせて頂きましょうかしら。まずはこちらを見てください」
「おぅ! なん……、だぁ……? お……?」
「はい……、あ……れ……?」
「……?」
エネルギア製の洗脳の魔法陣に魔力を通してそれを3人の冒険者に見せると、とたんに男達の表情が虚ろになる。ふふ、相変わらず即効性が強いわね、素晴らしいわ。
教会内の大部分は既に洗脳済みなのだけれども、教会内には生憎戦えるのが居なかったから戦える手駒が欲しかったのよ。帝国なら教会騎士なんてのも居たけれど、結界内で平和ボケした聖王国にそんなの居ないのだから。
本当は聖王宮内の騎士達を洗脳したいのだけどね、今は迂闊に聖王宮に手出しできない。焦りは禁物だわ。
「さて、アナタ達は私に絶対服従よ。良いわね?」
「あ……、はい」
「はい……」
「……」
1人無口過ぎて効いてるか分からないわね。何か言いなさいよ、まったく。ま、この状況で騒がないってことは効いてるのでしょうけれど。一応確認しておこうかしら。
「ここで知った内容は絶対に他人に話さないこと。良いわね?」
「はい……」
「はい」
「……」
「アナタ、返事は?」
「……はい」
ふん、やっぱり効いてるじゃない。
「まずは、アナタ達の素性を教えなさい。どうして聖王国に入ったの?」
「お、俺は、興味本位で……。前々から結界内がどうなってるのか気になってたんだ……」
「私は、国の指示で……、工作に……」
「……興味本位だ」
神経質そうな男はどこかの国の工作員なのね。ちょうど良いわ、その国の情報を根こそぎもらってあげる。他の2人はただの冒険者か。大柄の男は強そうだけれど、無口の男は使えなさそうね。万年、酒場で吞んだくれてそうな雰囲気よ。無能な味方は有能な敵より恐ろしいと聞くわ。無口の男は不要ね。
「神経質そうなアナタ、アナタの国の情報を纏めて後で私に提出しなさい」
神経質そうな男がこくりと頷く。
「それから大柄のアナタ、そっちの無口の男を殺せ。それと、この女も殺しなさい」
大柄の男に
「そっちの男の殺しもこの女の殺しも決行は明日よ。今からヤっちゃうと私も疑われちゃうんだから。まぁ、どうせ捕まるのでしょうけど……。そうね、捕まったら美人な女だったからムラムラしたとでも言っておきなさい。間違っても
「あ、それから無口なアナタ。アナタは明日、街の外れでじっと座っときなさいな。その方が楽に殺してもらえるでしょうよ」
さて、次は逃亡準備ね。タイミングは聖王都に攻め込まれる少し前くらいが良いのかしら。聖王宮の目は攻めてきた2カ国に向いているし、
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