203. まじ?
聖女さんにボードゲームで負けた数日後、私は鳥籠に入れられて街の大きな劇場に運ばれた。そして、VIP席みたいなところで鳥籠が開けられる。
劇場正面はまだ舞台幕が下りた状態だ。あの幕が上がると果たして舞台が出てくるのか、それとも映画スクリーンが出てくるのか……。この世界の文化レベル的に、たぶん舞台だと思う。となると演劇か、それともミュージカル?
私のお世話係の鳥籠メイドさんがいるのは当然として、なんとびっくり
さすが王族も利用する劇場、めちゃくちゃ豪華だよ。この街にこんな劇場があったんだねぇ。結構でかい建物だけど全然気づかなかった。
今までさんざん街中を観光してたのにこの劇場に気づかなかったのは、この建物が低くて、外から見ると高級感はあるけど豪華というよりはシックで落ち着いた感じになってるのが原因だよ。今まで私は、背が高かったり豪華だったりで目立つ建物を中心にまわってたもんなぁ。
VIP席は半個室みたいになってて、一般席よりも高い位置にある。下にある一般席を覗くと、街の中でもそれなりに裕福そうな人たちが多いっぽい。みんな結構良い服着てるね。
あ、一般席のあの2人……、お酒マンと受付
それにしても寒い。お城や冒険者ギルドには空調設備を付けたから忘れてたけど、この世界の文化レベルだと暖房なんて期待できないんだよね。ぎりぎり耐えられる程度なんだけど……、まぁ長くても数時間くらいだろうし我慢するか。
鳥籠メイドさんが用意してくれたクッキーや紅茶をモグモグゴクゴクしていたら、どうやら開演の時間になったっぽい。舞台端で身なりの良い男の人がなんやかんやしゃべった後、あたりが暗くなって舞台幕がゆっくりと上がっていく。そうか、今まで明るかったのは照明の魔道具だったのか。
うん、演劇だ。歌ってないからたぶんミュージカルじゃない。役者が数人いて、なんかこう、会議してるところかな? んー、王国を滅ぼす計画? え、もしかして結構物騒な内容だったりする?
短い会議が終わると会議室セットが舞台袖に捌けていく。魔力を感じないから人力で動かしてんのかな。あっという間に森のセットに早変わり、今度は森の中を走る護衛騎士付きの豪華な馬車が出てきた。屋根なしの馬車が舞台上をぐるぐる回っている間に、馬車の上のお姫様っぽい女性がなんやかんや言っている。不作で食べ物が無くて困ってるって?
うーん、同じところをぐるぐる回ってるけど、たぶん長距離移動中ですよってことかな? とか思ってたら、いきなり馬車が護衛とは別の騎士に襲われた。護衛騎士vs相手騎士で、あっという間に護衛騎士が負けていく。よわ。大丈夫なの、その国。
お姫様かっこ仮のピンチに颯爽と現れる羽の生えた女の人。羽の人がシャララ~ンと手をかざすと護衛騎士が生き返って相手騎士を倒してめでたしめでたし。お姫様かっこ仮はお城に無事生還しましたとさ。なんだこれ? ヒーローショー? うーん、チープ過ぎない?
ちょっと待って。今お姫様かっこ仮、なんて言った? 妖精様? え、羽の人って妖精なの? デカくね?
しかもまだ続くんかい。
なんかお城を大量の緑のおっさんが取り囲んでる。それに立ち向かう2人のイケメンとおじいさん1人。デカ妖精がイケメンに小さい剣を渡して……、ってこの話知ってるぞ?
海に行ったときに読んでもらった絵本の話だ。たぶんあの話の完全バージョンじゃないかな。でも絵本だと妖精は小さかったよね。つまりあの女の人が演じるデカ妖精も本当は小さいんだけど、人間が演じる都合上デカいのはしょうがないと。各自脳内変換で小さい妖精さんを想像してねってことか。なるほどなるほど。
んで、絵本のとおり緑のおっさんたち……、オークの群れを倒してハッピーエンドなのね。ってまだ続くんかーい! 思ったより長いな……。
あ、最初に会議してた人たちが出てきた。なんか怪しい儀式を始めたね。最初に王国を滅ぼすとか言ってたから、この人たちが元凶ってことか。
おおー、怪しい儀式からドラゴン出てきた! ドラゴンの下から伸びてる棒を数人がかりで操って結構リアルな動き、キモ。そしてお城を襲い始めた!
それに対してお城から王様らしき人が出てくる。どことなく
……あれ? ちょっとちょっと? 王様が白い鳥に乗ってドラゴンと空中戦? それってこの前の、
え、じゃぁそうすると……、あのデカ妖精って私じゃん! マジで? ホントに言ってる? じゃぁじゃぁ、最初の方で襲われてたお姫様かっこ仮は銀髪ちゃん? 結構なご年齢の女の人でしたよ? 銀髪ちゃんとは年齢に差がありすぎるって。確かに私は馬車で移動中に襲われてる銀髪ちゃんを助けた覚えはあるんだけど……。
いや、いやいやいやいや。この話が私の話なんだったら、さっきの
……ん? 小さい剣? もしかして……、アレか? お肉食べるときに作った私サイズの剣、なぜか今は宝物庫にあるボロボロの私人形が持ってる剣だ。じゃぁなに? 絵本の妖精も私だって言うの? あのアホ妖精が?
いやー、冗談きついって。
……まじ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます