202. ただの玉
なん……だと……?
薄々危ない気はしてたんだけど、ついに……、ついに聖女さんにボードゲームで負けてしまった。
あー、やめやめ。私は勝てない勝負をしない主義なんだよ。ってなワケで、違うゲームで勝負だ。
私はドールハウスが設置されている机の引き出しにしまっていたビー玉サイズの玉と、それを転がすシーソーレールを引っ張り出した。ボードゲームの駒をボードの真ん中にちゃちゃっと並べたら、あっと言う間にボウリングもどきの完成ってね。さぁ、どっちが多く駒を倒せるか勝負だよ!
と思って聖女さんの方を向くと、聖女さんが驚愕の表情で固まっていた。なんで? どして? その表情、冒険者ギルドの受付
フリーズから復帰した聖女さんがレールに設置していた玉をつまみ上げ、しげしげと観察し始めた。
んー? あー、なるほどね。きっと玉が綺麗で気に入ったんだ。高級ボードゲームに見劣りしないように結構頑張って作ったし、パッと見ガラス玉だけどなぜか光ってるから結構綺麗だよね、それ。わりと自信作なんだよ、へへ。
すると聖女さんは、おもむろに玉に魔力を込め始めた。
む? なんか光が増してる?
へー、そんなことできるんだ。さすが聖女、なんか神聖っぽい感じがしてきた。ただの透明な玉なのに、こうなるとなんか伝説のなんたらオーブですって言われても信じちゃうよ。
「妖精様! XX金XX玉XXXX結界XXX! XXXXX聖XXXXX! XXXXXXXXXXX!!」
え? え? なんて?
そんな突然早口でいろいろ言われても分からんて。
「XXXXXXXXXXX!!」
分かった分かった、分からんけど分かった。気に入ったんだよね?
しょうがないな、気に入ったんならあげても良いよ。どうせまたすぐ作れるし。あ、でも玉だけポンと渡されても困るかな? なんかアクセサリーとかにした方が良い?
えーと、ネックレスは鳥籠メイドさんに作ったし、イヤリングは銀髪ちゃんに作った。なんか違うのが良いよね、やっぱ。でも指輪にしては玉がでかすぎる。んー、腕輪かな。ヨシ。
んじゃ、ちょっとそれいったん返してね。んで、聖女っぽく銀色をベースに、金色で妖精の羽の飾り、中央に玉を付けて……、はいできあがり。
「それ、あげる」
「……ッ! XXXXXXXXX結界XXX! XXXXX聖XXXXX!」
うわー、マシンガントーク!
分かった分かった! ありがとうってことだよね? はいはいどういたしまして!
聖女さんがこんな情熱的とは思わなかったよ。物静かな印象だったんだけど、見た目で人を判断しちゃダメってことか。
うんうん、それもう好きにして良いから、私はもう行くね。バイバイ!
私は窓から逃げ出した。
とりあえず久しぶりに外で遊んでくかなー。
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